セリフがかなりいい 劇団コヨーテ『愛の顛末』

劇中歌われる『プカプカ』がメチャクチャいい。

まあ、いろんな人に愛された西岡恭蔵の曲だから、そもそも曲がいいだけなんじゃないか。そう思ったけど、しかしアコーディオンを弾きながら歌うスズエダフサコもかなり良かった。

ってことは、それを舞台上に出現させた作・演出も良かったってことだし、つまりそういうシーンのある『愛の顛末』という作品もいいということになる。

という舞台だ。

作品内に敷き詰められた細部のどこかに、必ずなにかがある。それを見つけると、とたんに光りだす。

実を言うと、僕は中盤までこの芝居に乗れなかった。「寺沢みなみ殺し」にまつわる探偵もの、という出だしはいいのだけど、三姉妹やサーカスなど、軽妙なノリの場面は楽しめなかった。

でも、サーカスのあと、天才医師エパタイが大きなカバンを開けるのが、カッコいい。パギャン! みたいな音とアクション。さらにいくつかのシーンのあと、ボンヤリしかけた僕の耳に、セリフが入ってくる。

「最初に着いた村は、ひまわりがたくさん咲いた黄色い村でした。」

いいセリフだ。グッと芝居に引き込まれる。そうして話し始められた、戦争にまつわるエピソードの美しさ。悲しさ。照明もいい。演出も力を感じた。で、冒頭に触れた『プカプカ』のシーンになっていく。

極限すれば、この芝居は音楽だ。音楽は好きか嫌いかだ。嫌いな音楽にいくら説明や解釈を加えても好きにはなれない。むしろもっと嫌いになる。劇団コヨーテ『愛の顛末』は、すごく好きな箇所と、好きになれない箇所でできている。

でも、それでいいんじゃないか? すべての人にすべての箇所を好きになってもらおうという芝居ではないはずだ。だったらもう、思いっきり好きになって、思いっきり嫌いになればいい。そういう舞台だった。

追記:

「ゲキカン!」を書くにあたって、参考として、事務局から各作品の脚本をもらっている。観劇後に読んだのだけど、亀井健の書く『愛の顛末』は、セリフがかなりいい。言葉の選び方、単語のつながり、セリフの長さ。正直、舞台で聞くよりも良かった(舞台化されているのに失礼だと思うが……)。劇場で、脚本販売のアナウンスを聞かなかったので、売ってないのかもしれない。だけど、読む価値のある脚本だ。劇場に行った方はせめてそのセリフに耳をすませてほしい。

 

公演場所:BLOCH

公演期間:2016年2月13日~2月20日

初出:演劇シーズン2016冬「ゲキカン!」

text by 島崎町

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