高校時代、自分の居場所はどこにあったのだろう。思い出そうとしても思い出せない。もうそんなに月日が流れてしまったのだけど。
北見緑陵高校演劇部『学校でなにやってんの』を観た。高校演劇の全道大会で最優秀賞に輝いた作品で、札幌演劇シーズン2017冬の特別公演。あらすじは……
たった1人の放送局員が、学校を紹介するための作品づくりをする。放課後、そのために集められた部活動の部長たち。放送局員の女の子はインタビューをしていくが、個性派ぞろいの部長たちゆえに、進行は難航、ついに夜になってしまう。さらに顧問の先生の問題行動で、部室のドアが開かなくなってしまい……。はたしてインタビューは終わるのか、みんなは無事、部室から出ることができるのか。
といった感じ。笑いの要素が多く、終始明るい舞台で、会場は好意的な笑いにつつまれていた。とにかくサービス精神旺盛なお芝居で、過去の演劇シーズン作品と比べても、ここまで徹底的に、楽しんでもらうという姿勢が出ていた舞台もなかったのではないか。
笑いの要素や楽しさの部分を支えていたのは、なんといっても放送局員を演じた後藤留果だ。マイクなど録音機材をたずさえ舞台上を生き生きと動き回る様は、ガジェットを身にまとったアラレちゃんみたいでキュートだった。終演後、パンフレットを読むと、演出を兼ねているという。すごいね。
彼女だけでない。顧問の問題児先生を演じた中村昇太の、笑いを起こす前のグッと溜めるあの間。客を引き寄せる力を持っている。彼が出てくるだけで、きっと面白くなるに違いないと思わせた。
無口な華道部部長を演じた加藤大雪も、難しい役だったに違いない。欲を言えば(脚本上のことだけど)、ついに一言も発しなかった彼が、劇中、唯一なにかをしゃべるとしたら、いったいなにを言うのだろうと思った。物語内であれだけ溜めこんだ沈黙のエントロピー的なものが、セリフとしてどういう風に出てくのかは興味があったのだけど。
しかし、彼の溜めこんだものは、行動として表れる。それはそれで、とてもいいシーンだった。狭い座布団の上だけを唯一の居場所としていた彼が、そこから飛び出していく。さわやかな感動があった。(その座布団を持って追いかけていく存在がいて、置いていったはずの居場所をあえてまた持っていこうとする行動がなにを示唆しているのか、深読みできるけどここでは触れない)。
居場所、というものの使い方は本当にうまかく、あれだけ動き回っていた放送局員が、終盤、自分の居場所に座ったときに起こる変化。うまい、うまいよ。
ほかにも、すべての役者・スタッフに触れたいのだけど字数が足りない。最後に言えることは、“高校演劇だからよかった”のでなく、一つの演劇作品としてよかったということで、間違いなく、あの日あの時間、舞台上は彼ら彼女らの居場所だった。
公演場所:かでる2・7
公演期間:2017年1月12日
text by 島崎町