詩的物語空間の広がり。─遊戯祭17『20m2の胞』

僕は今回の遊戯祭のテーマを知ったとき、このような詩情豊かな作品がいくつもエントリーしてくるのかと思っていたんです。(何団体がエントリーするのかも分からなかったので。)

そういう意味ではまさにどストライクな作品。音響効果がピアノの生演奏だけで、アップライトの前に座ったままの奏者もまた役者として絡んでくる演出がとても自然だった。鞄の中の友達という突飛なシチュエーションが詩的物語空間を作り出すのに成功していて、舞台装置のアイディアも含め、もし同じようなベクトルの作品が並んだならかなり群を抜いていたかもと思う。

「二十億光年の孤独」は無限の孤独(この詩が発表された当時の天文学では、宇宙の広さは20億光年だとされていたそうで)。埋められない心、届かない真意、言葉にできない孤独。──読み手が詩の行間を計るように、観客は登場人物の距離を計りながら清冽な共感を(瞬間的には)得られる反面、文学作品としての詩は初見でもテキストを何度も反芻(すう)することができるけど、生の演劇は一過性でそこここに散りばめられた想いを拾うチャンスは一度きりという難しさがあり、それならいっそ、多くの「孤独」を追わずに、もっと「ありきたり」なたったひとつの孤独の物語にしてしまっても良かったかなとか。個人的な感想ですが。(しかしそうすると難解さは減りますが、詩的情緒性も少なくなってしまうという、その辺が難しいところです^)それでも、遊戯祭のテーマを考えた上では、途中まで僕の中の「最優秀賞候補」のひとつでもありました。
劇団としてのエントリーではないですが、実質はデンコラに宮森さんが客演したという形なのですかね。演出でもあるむらかみさんが、役者としてもかなり印象的でした。
2017/4/29(土)11:00 琴似コンカリーニョにて観劇
──
『20m2の胞』(20へいほうメートルのほう)
脚本:徳永萌(デンコラ)
演出:むらかみなお(デンコラ)
出演:むらかみなお、秋山りな、古川侑三郎、小椋翔貴、ナカムラサキ、高橋清伽(以上、デンコラ)、宮森峻也

text by 九十八坊(orb)

SNSでもご購読できます。