初日なのでネタ抑えめに。。─イナダ組『シャケと爺と駅と』

実は割と急遽観劇を決めたので、フライヤーのビジュアルが『プーチンの落日』(内容は未見)に似てるなあとか、藤村さんが主役なのかなあとか程度の事前情報だけで観に行きました。(あ、藤村さん目当て、というわけではありませんよ。)これから観る方のためにあまり物語には触れませんが、これは大泉洋さんが主演した『アルツハイパーJ』(1999年)を“今”のイナダさんが現在の社会情勢の中で書いた物語なのだなと途中で思い当たりました。


(それはイナダさんが当日パンフに書いているのですが、その場では割と読まないので帰宅後に知りました。)
若い頃は「老い」を「外側」から眺めていたであろうイナダさんも、年齢とともに身近なテーマとなっていったんだろうなとか(これもパンフに書かれていた)、そしてそれは僕も同じで。観客の年齢によりテーマとの距離感は様々でしょうが、他人事とは思えない場面も多々。イナダさんは「投げかける人」なので、突き放すでもなく寄り添うわけでもないのですが、幾度かテーマにアプローチしていく中で、その思索は作品を重ねる毎に、そして年を重ねる毎に増していっているのでしょう。(ってのも当日パンフに書いてあった。うーん。。)

ちなみに僕が未見の『プーチンの落日』はかなりシチュエーションも似ているようで、それも観たかったなと今更ながら。(更にその前には『春日の原の駅のこと』という作品もあったようです。)
『アルツハイパーJ』では、中盤で、病院での大泉さんの長ゼリフに胸を衝かれた──それは大泉さんの「演技」に感心したのですが、今回は武田さんの同様のシーンでの「空気」に、大泉さんの時以上に心を掴まれてしまいました。(当時の大泉さんの年齢を考えれば、その「演技」はもちろん凄かったのです、と言っておきますが。)
近年のイナダ組での武田さんは「力技」の印象があるのですが(ほめてます)、今回はそれだけではない見応えや、老人らしいセリフまわしの聞き取りづらさと芝居としての聞き取りやすさのすれすれにコントロールされた声音など──やはり武田さんはオンリーワンの人だわと思ってしまう。
事前情報では藤村さんが主役なのかな?と思ってしまうのですが、それはあながちフェイクなだけではなく、劇中では藤村さん演じる「長男」に、このテーマの比重がかかってくるからなのでしょう。声高に演じる藤村さんですが、怒っているのではなくきっと悲しいのだ、と思ってしまうのは、自分もその立場に近づいているからでしょうか。
役者力のあるメンバーばかりで挙げればキリがないのですが、中でも今日は池江さんの好演が印象的でした。舞台装置も必見。
(かなり支離滅裂な感想ですがまだ初日なので。。察してください。)
2017/5/5(金)19:30 琴似コンカリーニョにて観劇

 

──

劇団イナダ組 新作公演『シャケと爺と駅と』

 

作・演出:イナダ

出演:藤村忠寿 武田晋 山村素絵  吉田諒希
HIROKI(EverZOne) 赤谷翔次郎(パインソー)
藤谷真由美(パインソー) 池江欄 KEI(EverZOne)白鳥雄介
佐藤剛(intro) 葉山太司(飛ぶ劇場)

text by 九十八坊(orb)

SNSでもご購読できます。