夏の夜の絵本。─遊戯祭17『平木トメ子の秘密のかいかん』

米沢さんの織りなす物語にはどこかしら絵本的な優しい縁取りをいつも感じているのですが、それを“あの”ボイジャーの前田さんが料理してしまうのだから、これは“猥雑な絵本”とでもいおうか。fireworksさんの持ち味でもある生演奏と歌は、いつもより電子楽器多めの編成で夏祭り感。地方の狭いコミュニティが舞台で、夏の匂いや、会館がひとつしかない町、という設定がよくて、猥雑さも含めて山田太一や倉本聰作品の(地方初ドラマの)ような“土地の匂い”も感じられた。

しかし、モチーフが『これが私の優しさです』なら、個人的には、<あなたが死にかけているときに/あなたについて考えないでいいですか>にこだわって欲しかったかなあと欲張ってしまう。
大人(とはいえ若年層)と、その子供達の見分けが外見から区別しにくかったりするのは当然意図的であったのでしょうね。どこまでが子供で、どこから大人かは外見や年齢ではないということなのかな。それならばもっと内面(子供なのに大人、大人なのに子供)を際立たせてもよかったかと。トメ子さんが男優なのはよしとして、主軸の恋愛に絡む男性に女優さんを配置したのは、内面の未熟性とともに狭いコミュニティ(町)での男女関係という生々しさを緩和するためだったのだろうか。
(あまり切り込んで書いていくと、結構まとはずれになってしまうのでこの辺で 笑)
いろんな意図が、一般観客に向けての見た目の分かりにくさに繋がってしまっていたような気もするけど。。それならいっそもっと不親切に観客を突き放してもよかったかなあとか。井上さんがしっかりと最初と最後に(分かりやすいセリフで)まとめてくれていたので。
米沢春花×前田透というコラボの新鮮さを愉しみながらも、個人的には『谷川俊太郎と僕』の最優秀賞には選ばないかなあというのが、個人的な率直な感想ではあります。しかし実際には最優秀賞を獲得されたのですから、そこは素直に「おめでとう!」の言葉を贈ります。前田さん、リベンジおめでとう。
(※ちなみに僕はこの3年間、とうとう一度も最優秀賞を穫った作品には投票していませんでした 。。)

 

 

2017/4/29(土)15:30 琴似コンカリーニョにて観劇

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『平木トメ子の秘密のかいかん』
脚本:米沢春花(劇団fireworks)
演出:前田透(劇団・木製ボイジャー14号)
出演:朱希(劇団・木製ボイジャー14号)、井上嵩之(劇団・木製ボイジャー14号)、おかしゅんすけ(劇団・木製ボイジャー14号)、西村颯馬(劇団・木製ボイジャー14号)、小川沙織、安藤友樹、西村翔太(劇団千年王國)、和泉諒(劇団fireworks)、木村歩未(劇団fireworks)、梶原正樹(劇団宴夢)、松田弥生(劇団宴夢)、後藤カツキ(トランク機械シアター)、安田せひろ、パッション、MC脂肪漢

text by 九十八坊(orb)

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