人形よりも人に注目ー文楽セミナー『わかれば もっとおもしろい 文楽の世界』

『仏果を得ず』(三浦しをん著)という、太夫を仕事にする青年の悲喜こもごもを描いた小説がありますが、終演後それを無性に読み直したくなりました。

今まで、人形とあらすじにしか注目してなかった文楽が、演者達の表現が合わさって出来たものなんだと改めて気付かされたから。
人形・太夫(語り)・三味線の3つの要素で構成される文楽ですが、やっぱり一番注目するのは正面の人形。たまに太夫をチラ見するくらいで、大変失礼ながら三味線は効果音くらいに思っていました。が、その印象が一変。今回のセミナーではそれぞれの役割について担当の方が丁寧に解説(声を出す工夫、人形の仕組み等)してくれたのですが、中でも三味線の方の話が秀逸で。自身の恋愛小話(片想い9年)を披露しつつ、三味線の音で表現できる豊かさを実演してくれました。
「この世にあるすべての音を、三味線で表現しようとする」という言葉に痺れました!なんて格好いい。

普段は3つの要素が合わさった状態の文楽という総合芸術を観てますが、それぞれバラして注目してもこんなに豊かなのかと改めて突き付けられました。
今回は「文楽セミナー」というだけあって、2時間の尺の中で、実際の上演は30分だけ。人形芝居を期待して観に行った身としては少々物足りなかったですが、今まで見えていなかった(見過ごしていた)演者側に目を向けることができたという点では、貴重な機会でした。

あと毎回思うのですが文楽の客席は、やや年齢層高め。10月に予定されている文楽のみの上演(今回のセミナーは、その前振りかと思ったけど、一言も宣伝されなかった…。勿体無い)にはU-22割があるので、若い方がもっと見に来るといいなぁと切実に思います。目指せ平均年齢ダウン。

※観劇予報に「字幕もある」と書きましたが、今回はありませんでした。失礼致しました。

5/5(金・祝)14:00〜

text by うめ

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