●長い物語、大勢の登場人物。けれど各シーンにおいて演出家が見せたいものがハッキリしており、記憶(認識)を切り替えつつ進んでいくストーリーを、迷路に入ることなく追うことができた。動線に混乱がないのもすごい。
保健室をたっぷりの薄いカーテンで遮蔽する動きが、記憶にかかる靄を思わせて美しい。
未知子、絹江、アイの醸し出すエス系の謎めいた雰囲気に、古典的少女小説を連想。
●キャラクターの書き分けがわかりやすく、また役名を何度もセリフに折り込むなど、大勢の女子を登場させつつ観客を混乱させないよう配慮された脚本。
含蓄ありげに提示される言葉やモチーフの数々、しかし深く潜ることはなく、要素の多さが通り過ぎていく。気になったところから観客がそれぞれに思いを馳せろ、ということか。
●絹江の死以降の展開には、イマイチ乗り切れなかった。「意識のみが持続する永遠の命」は命だろうか? そして身体を離れてまで存在したい意識などあるだろうか。共感しにくい。むしろ「永遠に若い身体」なら理解できる。病弱な研究者ならそちらを考えそうなものだが。
認知症の脳にシステムを組み込む生体実験が神への冒涜、というのもインパクトが伝わりにくい。脳を他の生体に移植するとか、他人の脳を移植するとかならわかるが。そして、結局のところ脚本家は、意識、心(感情)、人格の違いをどう捉えているのかは全くわからなかった。
が、もちろん、作品全体としてはそのようなことはどうでもいい、ということは理解している。ちょっと突っこんでみたくなっただけ。
●ギャグと文字映像は不要だったような。何かのサービスだろうか。
●展開に飛躍はあるが、世界観が明瞭でゆるぎなく、その中で女子たちそれぞれの、大部分は原石としてのきらきらしさを見せてくれた舞台。
5月21日(日) 17時(星組)観劇
text by 瞑想子