つれづれなるままに。─アリスインプロジェクト in 札幌『みちこのみたせかい』

カンパニーの存在も前回公演(未見)のことも知っていたけど、自分は場違いなのではないかと二の足を踏んでいたわけです。(いや、アイドルが苦手とかそういう訳ではないのですが。)コンカリ(=割と家チカ)というのと、見知った役者さんも多く出演していることに勇気を得て足を運ぶことにしたのですが、例によってあまり事前情報を入手しないで観る主義なので、フライヤーのテキストもナナメ読みでふわっとしたストーリー認識しかなく、『ゴースト(洋画)』や『黄泉がえり(邦画)』みたいな話かなあとか、学習発表会みたい(失礼)だったらイヤだなあとか、まあそんな感じで客席につきました。

保健室のひと幕が始まった時には「『櫻の園(1990年版)』が展開されるのか」と思ったのですが。。ユイとカイの登場で「おや?」と。(このあたりでちゃんとフライヤーを読んでこなかった事をちょっと後悔)。
かなり本格的なSF(ファンタジーSF)を骨格とした作品。実際の役年齢ではなく主役の主観で表された舞台やタイムラインの演出などは、小説的でもあり、芝居の「嘘」が生きています。
しかし、小説のように文字情報ではなく視覚・聴覚に訴えるのが「お芝居」ですから、それゆえにキャスト達には、幅広い層の観客に対して場と空気感と物語を(演技で)伝えるという「説明責任」が課せられ、脳科学やAI、仮想空間にまで観客を引き込まなければならない──個人プレイではどうにもならない総合力が特に試される作品、連帯責任の場でもありました。
芝居経験という点では一目瞭然の開きがあるメンバーもいるわけですが、それについては、このSFファンタジー的な物語を、それぞれの時代風景も借りながら「アイドル」のイノセンス(無垢さ)で包むという企ての中で、個々の領域やハードルを真摯に全うしてくれれば成功であり、僕の拝見した星組大千秋楽は、ちゃんと満足できるものでした。
(前半を中心に投下された「笑い」は、まあある種のアイドル的お約束の様式と甘受できるスレスレ許容範囲として。)
「自分のままに、自分の思う通りに、精一杯生きる」ことや、
「好きな人とは、理屈より感情で、ずっと一緒にいたい」とか、
そんなことを感じながら。
ここまでの脚本・演出に挑んでくれるのなら(納谷さん、お疲れさまです)、アイドル×芝居というジャンルも充分にアリだし、そこを入口に札幌演劇の間口が広がることにもまた、期待したいです。
吉本さん…座長の責任を全うする努力家。
塚本さん…どんなセリフも心地よいのは、多くの役を経験してきた成果。
廣瀬さん…泣きも笑いも安心して観せてもらえるハマリ役。
ちーしゃみんさん…元気成分ちょっと多めだけど(笑)、ちゃんとそこに生きていた千秋楽。
久保田さん…専門用語等のこなれ方も含め、立ち位置にフィットする存在感。
岩杉さん…OP歌唱のダンス(手の振り)の綺麗さと雄弁さが際立ち、一気に物語の空気に引き込まれた。
(※宮田さんや脇田さんも拝見したかった。残念)
2017/5/21(日)17:00 琴似コンカリーニョにて星組大千秋楽を観劇
──
アリスインプロジェクト札幌公演 第2弾『みちこのみたせかい』(2017/5/17〜21)
演出:納谷真大(ELEVEN NINES)
原作・脚本:麻草郁
出演:
【シングルキャスト】
吉本ほのか(敷島未知子 役) 廣瀬詩映莉(井村結 役)
宮田桃伽/久保田れな(井村解 役)
駒野遥香(アイ 役) 塚本奈緒美(織部絹江 役)
長南舞(春日花 役)
横山奈央(立原冬 役) 牛乳寒天なつみん(湯川野枝 役)
長久保桃子(新井ちか 役)
鈴木花穂(村瀬あおい 役) 谷口郁美(鎌田のばら 役)
 羽美(坂上希美 役)
尾崎綺澄(水元香苗 役) 小西麻里菜(車谷千鶴子 役)
旭(林真央 役)
ちーしゃみん(西倉晶 役) 岩杉 夏(倉橋玉枝 役)
【月組】
川辺志穂(剣先千代 役) 田中優奈(古沢加悦 役)
藤原千尋(加山あけび 役) 脇田唯(卯月温子 役)
【星組】
西森妃奈(剣先千代 役) 菊地紗弥佳(古沢加悦 役)
綾瀬りの(加山あけび 役) 橘美羽(卯月温子 役)

text by 九十八坊(orb)

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