サロンの楽しみ 小林なるみ・黒川絵里奈『影絵と朗読の世界 〜赤い蝋燭と人魚/うるうのもり〜』

●朗読と影絵(&砂絵)のコラボ企画。小さな会場の落ち着いたトーンと朗読・影絵がつくるムードが心地いい。飴やお茶の提供もあって至れり尽くせり。くつろいだ気分で鑑賞。朗読はとても聞きやすく、過度の強調はないのにキャラクターの違いもわかりやすい。影絵は繊細で美しい。小川未明『赤い蝋燭と人魚』と小林賢太郎『うるうのもり』の2作品を朗読。

●『赤い蝋燭と人魚』では、朗読を聞きながら脳内で立ち上げるビジョンと影絵とに解離があって、作品世界になかなか入れなかった。目を閉じて声(文章)から世界を作り、その後に目を開けて影絵を見る、という作業を繰り返した。つまり挿絵としては素敵だったが、私にとっては、物語世界のビジョンを立ち上げるサポートにはあまりならなかった。情景描写の多い小説だからだろうか。
声を聞きながら物語を想像するときに、投影とほしいビジョンとのズレが気になった。人魚や蝋燭など対象そのものが映されていることが多かったが、「ここでは荒涼たる海だけがほしいのに」「ここは蝋燭じゃなくて人々のほうが…」「蝋燭大きい!」と思いながら鑑賞していた。また、絵の変化が多いのも、文章と平行しての情報処理に手間取る感じで、想像を阻害する方向に働いていたように思う。

●『うるうのもり』では、朗読と絵とが補完しあって一つの世界を想像させる方向に働いていた。絵本という、最初から絵と共生する文章だからか。特に砂絵は、文章とは近くて遠い距離感、描ききらない曖昧さが、作品世界のイメージを作るには丁度良かった。植物を使って表現した畑と森も好きだった。

●しかし一番素敵だったのは、最後に予告として披露されたもの(作品名を失念…)。「女王と二人の王女がいました」というように始まる文章に、そのものズバリの絵が投影され、話の進行とともに少しだけ背景が変わっていく。これは脳内で物語を想像していく状態にとてもしっくりきた(姉に影が付けられたのは余計と感じたけれども)。
客が盛り上がったのは途中で話を打ち切ったからではなく、このプレビューが朗読した2作より、コラボとしてよく出来ていたからではないかと感じた。

●素敵な試みであり、また聞きたい&観たいと感じた。レッドベリーの雰囲気とマッチしているように思ったので、ぜひまた同じ会場で。

 
・2017/5/28 13:00〜
・レッドベリースタジオ

text by 瞑想子

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