2時間の〈胡蝶の夢〉 クラアク芸術堂『5月の蝶』

私ごとで恐縮ですが、子供の頃からよく夢を見ます。

起きた直後は現実の出来事みたいにまざまざと覚えているのに、時間が経ったり、その内容を人に話そうとしたりすると、途端に輪郭がぼやけて、どんな夢を見たのかあやふやになってくるのが常ではありますが。

 

この「5月の蝶」も、そんな話でした。

2時間びっしり、色々と目まぐるしく動く人々や出来事を見たはずなのに、ではいざ自分が何を見たか思い出そうとすると、なんだか思い出せない。どこかで見たことあるゆるキャラ、独善的な女子、お手軽すぎるタイムリープ等々…そのどれもが話を構成していた要素の一つなのに、それだけを取り出して話そうすると、見たものの1/10も表していないような気がして。

この掴みどころのない感じが、夢を見た後によく似ているなと思いました。

 

劇中、「あと1時間40分」とか「さっき始まったばかりのフィクション」等、〈いま劇場で作り物を見ている自分〉を意識させられる場面が度々あったにも関わらず、「あれ?いま私、ほんとにここにいる?」と自分の立ち位置を疑ってしまい、おっ、となりました。どこまでが夢で、どこからが現実だったのか境界がぼやける、そんな〈胡蝶の夢〉のような瞬間が。ほんとに一瞬ですけどね。

筋を追おうとすると、フッとぼやける。ぱっぱと変わる場面に翻弄された2時間でしたが、その捉えどころのない雰囲気を楽しむ話だったのかな、と思っています。

とりあえずこれが1作目となるクラアク芸術堂。2作目も見ないと、何とも言えないなぁ…。

 

2017/5/28(日)12:00~

text by うめ

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