ほとばしる才気の衝突 BLOCH REVIVE『トキハナ』

もう16年も前に書かれたホンだというのに、こんなに荒々しくも瑞々しいのはなんでしょうか。札幌の演劇シーンでは、もう中堅の域に入っていて、「愛と孤独と…」とでも表現すればいいのか、孤高というと褒めすぎだけれど独特の作風が僕は好きです。そう、劇団コヨーテの亀井健。書いたのは24歳の時だそうです。世界を敵に回しても作ってやるんだ的な、作家の意気込みを感じる粗削りですが一本芯の通った熱量たっぷりの物語世界でした。叫ぶような台詞も尖っていて力強かったです。心を揺さぶられた台詞や、おー、と感動したシークエンスもありました。モチーフは幾つかの形をとって現われるのですが、どこか閉じた世界にいる若者が自らの拳の力でシステムをぶち壊して外界へ出ていくというのが時代性を感じさせます。2001年と言えば、僕はその前年に初めてドラマプロデューサーとしてデビューし、休む間もなく鈴井貴之の本編デビュー作となる「man-hole」のプロデューサーチームにも加わりました。映像と舞台という違いはありますが、脚本がいかに大切かガツンと思い知ったのもこの頃です。脚本術とでもいうのでしょうか、勉強のために演劇と呼ばれる世界に遮二無二に触れたのです。当時の僕はと言えば、初めての役割にしがみつくのにアップアップで、この手に掴んだと思った表現らしきものが上手く説明できず、確信も持てなかったことを思い出します。そうこうしているうちに、21世紀が始まったぜ的な祝祭は、あの9.11ですべて吹き飛ばされてしまったのです。今に通じるテロルと分断の時代の引き金を引いた時代の大転換期だったと思うのですが、札幌には亀井のように『先輩たちの作る世界はつまんねぇ、いい作品作ったら観てもらえるんだと息巻いていた』(リフレットより)青年がいたのですね。この芝居で描かれるある種の暴力性は、まさしく2001年の空気のように感じました。

BLOCH REVIVEは過去に上演した作品を若手演出家で再演しようという面白い試みです。去年のTGR札幌劇場祭で、新人賞部門最優秀賞を獲った劇団・木製ボイジャー14号の前田透は、デフォルメされつつも、真っすぐな亀井本の面白さを2017年の若者群像として見事に置き換えて魅せました。思ったのですが、若者を取り巻く社会環境は、2001年と比べると間違いなく劣化しているでしょう。社会全体が保持力を失っていく成長なき世界に、主人公が己の拳で打ち負かし、解き放ったものはなんだったのでしょうか。色あせることのない魅力ある本と向き合い、亀井ワールドの魅力を十分に引き出した演出の前田の才気が光りました。多彩な役者陣にも好感。こういう再演の試みは大いに歓迎したいと思います。

6/3(土)マチネ 13:00~

 

text by しのぴー

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