演劇人への応援歌〜新劇場『十一人の少年』

北村想が愛しくなる作品。良い脚本をストレートに作り上げてくれるのはありがたい。ヘタムラ・ゾウなんて自虐的な名前で登場しているが、北村想らしい想像力バンザイの世界。見終わった後に、夢を見ていたかのような、もんわりする芝居だ。劇中、銀河鉄道が通り過ぎていく。場面転換に使われる汽車の音と影があるだけなのだが、北村想だからきっと・・。
ミヒャエル・エンデの『モモ』をもとに、想像・創造する大人たちと「想像力泥棒?」との戦い。身近なモチーフや古典、昔の流行ものを取り込む、ネタの分かりやすさが親しみやすい。想像力賛美の夢のような世界に、しっかり社会的メッセージを加えた。だからちょっと長い。やまびこ座のベンチで2時間10分(休憩10分含む)は腰がだるいのだが、前半で引き込まれた。さすが本がいい。私は休憩がもどかしく、ずずっと最後まで行っちゃってください、という感じだったが、オーディエンスには日曜昼らしく、ご高齢者、お子ちゃまもいるので、中断やむなしというところ。

高野吟子さんが出るから楽しみにしていた。ほんと、この人は和服姿のいい女がピタリとハマる達者な女優さんだ。あっぱれ、少年役でダンスまでしていた。
滑稽でありながら世俗にまみれる役柄の小川貴大氏も、スーパーマンになって飛びたい男役、ゲスト出演のバリ・タカノ氏も、照れのないプロフェッショナルな演技。セリフの声量もメリハリも適切。こういう人たちが脇にいると安心。
「思う保険」セールスレディコンビ役で息ぴったりに楽しく好演したのは、栗原聡美さんとゲスト出演の太田有香さん。踊る二人はピンクレディのようだった。コケテッィシュ。案外、パフィー気味でも面白いかも(意味不明?)。さても栗原さんの、股を広げて腰を落とした、いわゆるドスコイ姿勢に熱い意気込みを感じた。一皮剥けた感じ。
ベテランに支えられて、新劇場の若手俳優さんも皆んなよく頑張っていた。主役の鈴木大生氏はセリフの多い中、最後まで堂々とストーリーを引っ張っていた。

本作品は、演劇人への応援歌。本作の青木のように、想像力を持たない輩には「アホか」という気概を持つとともに、豊かな想像力をもって、作品としてその想像を顕在化してほしい。その作品はきっと誰かの胸を打つ。・・かもしれない。ともあれ、想像バンザイ、演劇バンザイなのだ。ありがとう、ありがとう。

2017年6月18日13:00
やまびこ座にて観劇

text by やすみん

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