円熟の演出、時代の香り 新劇場『十一人の少年』 

いつもながら円熟した山根演出が見みどころでした。
過不足なく安定し、かつ、いくつかの斬新さ、見せ場を盛り込んで
お客を楽しませる。
力量に大きな差のある役者たちをまとめあげ
本に即したポイントを外さない。
この目配りと統括力は、長年の経験だけではなく
人間の「魅力」や「おもしろみ」のありようを見つめてきた
演出家の資質なのだろうと思います。

劇団新劇場が札幌に在ることの意味は
単に劇団の歴史が古いということではなく
明治・大正・昭和といった時代の
日本の風俗や時代の空気を形にすることができる
その基本を備えている劇団は、
平成も間もなく終わろうとする現在、
札幌ではここしかない、ということだと思います。

今回も、高野吟子、栗原聡美といった女優たちが見せた
和服の着こなしや所作、ストリップティーズダンスなど
若い劇団では、パロディや「それ風」の表現しかできないでしょう。
東京や関西であれば、根深い伝統に支えられて
若い人でも身につけて当然の素養が札幌には欠けている。
形だけ大切なのではなく、こうしたことを軽視することで
抜け落ちてゆくものが、演劇では多々あるだろうと思います。

そういう意味で、今回の作品に若い世代の俳優が
数多く参加していることを、とてもうれしく思いました。

text by けせらせら

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