「読後感」という言葉が最も近いと思う。文学的な演劇。まるで推理小説を読んでいるかのようであった。
台詞の裏と間を探り、思考を巡らせ、緻密に配置された点を線で繋いでいき最後に「ああ、なるほど…」と全てが心にズシリとのしかかるような、あの感覚は札幌発信の作品ではなかなか体験できないと思う。
舞台上には紙片が散らばっていて、たまに足の裏に張り付くのを登場人物は手でさっと取り除く。そのわりには、そこには何も無いかのように掃除機をかけている。紙片=消えることの無い過去・目を背けてきた現実・解決を先送りにしてきた問題なのであろう。
空虚・荒廃・暴力性を内に秘めながら、あくまでも穏やかでありつづける日常がゆったりと流れる。その様子に何だかとてもゾッとした。
人生というのは、きっと必ずどこかで歪みが生じてしまうのだ。それに気づかないふりをするか、必死に歪みを正そうとするかというだけで。
1年後、3年後、5年後、何度でも観たい作品だ。
投稿者:雪
text by 招待企画ゲスト