こんなふうに終わってほしかった! yhs『忘れたいのに思い出せない』

投稿者:高崎大志

yhs「忘れたいのに思い出せない」を拝見しました。

yhs「忘れたいのに思い出せない」認知症家族の介護やシングルマザーを覚悟した女性の
問題などに挑戦した意欲作だったと思います。

主演の福地美乃さんの好演、芸達者な役者による笑いなどに支えられて、いい観劇後感を
味わいました。

以下は、私個人の勝手な好き嫌いの話ですので、一個人の無責任な勝手な感想としてご覧
ください。

「忘れたいのに思い出せない」のエピソードについてです。

個人的にはこういうエピローグであってほしかった!!!!

センリさんの孫娘のトオルさんが、出産のために入院するっていうシーンのあと、長い暗
転があって、エピローグに入りましたよね。

照明が入るとおばあちゃんはベッドに横たわっています。

そして、トオルさんが、赤ちゃんを連れて戻ってきます。

それからカヤモリさんが交通事故を起こしたとか、ちょっとしたボヤ騒ぎがある、、、
そんなエピローグでしたね。

私の個人的な妄想エピソードは、こうです。

トオルさん出産のために入院する

 ↓

長めの暗転
 
 ↓

明転する
 
 ↓

エピローグ
(本編では、ベットに横たわったセンリさんが目に入ってくるシーンですが)

まず、ベッドは撤収です。
舞台上にベッドはありません。
そして、センリさんは、ひ孫を左腕にだいて、右手で掃除機なんかを使って軽快に掃除を
している。鼻歌交じりに。

こんな絵です。
こんな絵がお客さんの前にひろがります。
もうね、絶対、お客さんは、なにがなんだかわかんないと思います。

「えっ、えっ、なに、なに。なにがどうなってそうなった???」

と、必ずこうなるはずです。
そこで、すかさず、2,3人位の人がその部屋に入ってきて、そして、こういうのです

「まさか、手がざしが、こんなに効くとはねえーーー!」

これです。

ちょっと、想像してもらえばわかると思いますが、あの芸達者な役者さんたちでこれをやっ
たら、ぜったい大爆笑です。まちがいなく大大爆笑です。

札幌演劇史に残る大爆笑だと思います。

加えて、トオルさんは定職を見つけたということにしてもいい。

こんなかんじで終われば、いろんな作品上の解釈の難しいところもすべて吹き飛びます。

すべてを伏線にして、ここで回収できたと言える感じがします。

文字通りのハッピーエンドです。

しかし、現実的には、この終わり方は実際にはあり得ない。

手かざしによって、認知症や膝痛がなおることはフツウありえません。

歌舞伎かなにかのどのタイトルか忘れましたが、シーン的にはありえないけども、静御前
がラストに楽しそうに舞うというアレです。

(死んだ義経を思って悲しく舞うというのがリアリズムですが、それでは観劇後感が悪い
ということで、歴史を経るうちに楽しそうに舞うようになったと聞きます)

しかし、私は単にギャグだけで言っているわけではありません。
お客さんは、「ありえねーよ」ってツッコミながら笑い、そして家に帰る途中できっ
とこう思うでしょう。

「おばあちゃんが、回復するなんてありえないことだ。回復しなかったとしてあの家族は
一体どうなるのだろう、、、、」と。

喜劇こそが最高の悲劇という言葉があったかどうは知りませんが、まさにその言葉を体現
するようなラストシーンではありませんか。

以上、私の無責任かつ勝手な妄想にお付き合いいただきましてありがとうございます。

text by ゲスト投稿

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