エネルギーの塊みたいな舞台だ。
ミュージカルユニットもえぎ色『Princess Fighter』は、やりたことをやりたいだけ、あれもこれもと詰めこんで、すべてをしっかりやりきった。
演技あり歌ありダンスあり殺陣ありエンドクレジットありいま観たばかりの舞台のいい感じの静止画ありでさらにそのあとにこれが本編というテンションでレビューショーというダンス公演までやりきった怒濤の2時間でどうだ参ったかと言わんばかりに魅せたそれらすべてを称してこれを色に例えるならば人はそれを「もえぎ色」と呼ぶんだろう。
過剰さはときに下品になるけど、本作にはそんな感じはまったくない。むしろ過剰さの向こうにゆるぎない自信やプライドまで見えて、すがすがしかった。圧倒的な個性と表現力と完遂力を持った演出兼振付兼作曲兼もえぎ色代表の光燿萌希の力だろう。
スタッフワークもよかった。照明(相馬寛之)のゴージャス感は爽快だったし、舞台美術(高村由紀子)は複数の昔話を取りこんだ物語を1つの世界にまとめる効果を発揮し、存在感があった。
ちなみに高村由紀子は、今期演劇シーズンでは、yhs『忘れたいのに思い出せない』で現実と幻夢の世界をシームレスに表現した美しい舞台を作り、パインソー『extreme+logic(S)』ではヒーローもの世界のシンプルさとカッコ良さを再現し、もえぎ色の次のイレブンナイン『あっちこっち佐藤さん』でも舞台美術でクレジットされている。
僕は演劇界にうとくて、きっと業界的にはなにをいまさらという感じなんだろうが、いま札幌の演劇が「おっ、面白いね」って思われてるとしたらその一因はもしかしてこの人にあるんじゃないだろうか?
(調べてみたら演劇シーズンではイレブンナイン『12人の怒れる男』や弦巻楽団『君は素敵』もそうだった。才能はとっくに発揮されていた。自分の不明を恥じるばかり……)
役者でいうと、塚本奈緒美のかわいいお姫様感や、長麻美(エンプロ)の病んだお姫様像から生まれる笑いもよかった(あのキャラだけのスピンオフを観てみたい)。
さらにこの舞台で性格俳優ぶりをいかんなく発揮した青木玖璃子(yhs)の怪演。『オズの魔法使い』や『マレフィセント』など古今東西の魔女役に匹敵する堂々たる悪役っぷりで、僕は、かつて戦隊ものの悪女役として活躍し国内外にファンのいる曽我町子を思い出した。今後の活躍が楽しみだ。
それにしても、こうやってあらためて観るとミュージカルはつくづく言葉なのだと思う。歌詞に思いを乗せて歌いあげることによって、より感情的に、よりゴージャスに場面が作られていく。だからこそ、歌の歌詞を聴きとれるかどうかは重要なはずだ。
本作では聴きとりにくい箇所が多々あったので、演劇シーズンというロングラン公演の中で改善されていくことを期待する。さらに、歌やダンスなどもまだまだこれから、上を目ざしていくのだろう。上演時間をふくめ(やっぱり長い、20分は削ってほしい)、今後この作品がもえぎ色のレパートリーとしてまた再演される際の期待として。
公演場所:コンカリーニョ
公演期間:2017年8月5日~8月12日
初出:札幌演劇シーズン2017夏「ゲキカン!」
text by 島崎町