死を茶化したらアカン。 OOPARTS『天国への階段』

※ネタバレがあります

映画や音楽、ファッションなどと同じように、演劇にもそれぞれ好きなジャンルや不得意なジャンルがあると思う。私の場合、「死」をテーマにした作品を好んで観るが、茶化されると不快になる。死は軽々しいものではないし、そもそも「茶化していいものなの?」と思っているからだ。

鈴井貴之の演劇ユニット「OOPARTS」の新作は、特殊清掃員を主人公にした「天国の階段」だ。

ウィキペディアによると-
特殊清掃業(とくしゅせいそうぎょう)とは、清掃業の一形態である。一般には、Crime Scene Cleaners(事件現場清掃業)等とも呼ばれる清掃を指すことが多く、事件、事故、自殺等の変死現場や独居死、孤立死、孤独死により遺体の発見が遅れ、遺体の腐敗や腐乱によりダメージを受けた室内の原状回復や原状復旧業務を指す

-というように、舞台は死後3カ月経って死体が発見された部屋で、特殊清掃員と彼らをテーマに番組を制作しようとするテレビクルーが出てくる。セットは白を基調にした枠のような平台が組み合わされ、空いている部分に白いビニール袋や箱が詰められている。これが故人が残した遺品らしい。それらを片付けながら、テレビクルーが特殊清掃員たちにインタビューを続け、彼らの背後にある物語が実はつながっていた-という事実を知る。ミスターらしい出演者をいじるギャグは鉄板だが、物語のあらゆるところでリアルさが欠如していて、それが「茶化している」と感じさせられた。不満だった点を以下、箇条書きで。
 
 
・最初の「カメラのバッテリーがない」騒ぎは何だったのか(普通、カメラマン自身も替えのバッテリーを持っていることが多い)
 
・(死んだ人の)体液が床(畳?)にも染みこんでいるというくだりの後に、そこを平気で踏むのはなぜか
 
・死後3カ月放置された部屋に入って、マスクを外すタイミングが早くないか→テレビクルーが鼻にティッシュを詰めていたけれど、詰めるまでの時間が長すぎた
 
・特殊清掃員の仕事が雑過ぎる。いくつもの現場をこなしている人たちのはずなのに、いちいち「虫が-!」などと叫ぶ
 
・部屋で死んだ男が実は、特殊清掃員のうちの1人の父親だったという「ドラマ」を持ち込むのは、何だか無理っぽい
 
 
2014年に、特殊清掃員をテーマにした「ONEOR8」の「世界は嘘で出来ている」という舞台を観た。特殊清掃員である男が、自分の弟が自死したゴミだらけの部屋を掃除する。それと平行して、生きていた時の弟や彼に関わる人たちの思いが巻き戻されるように描かれていく、人間味あふれる作品だった(後に本作は岸田國士戯曲賞にノミネート)。思えば、ゴミにあふれる部屋がきれいになっていく流れは、「天国の階段」と全く同じだ。

ネタバレしちゃうと、特殊清掃員は現場に着く前に交通事故に遭っていた。だから、テレビクルーが会ったのは幽霊もしくは幽体離脱している特殊清掃員たちだった、というオチ。永野宗典(ヨーロッパ企画)のダメっぷり炸裂の演技は相変わらず面白かったのだけど-。
 
 
2017年8月12日13時 道新ホール

text by マサコさん

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