結論から言うと、圧倒して欲しかった。
いわゆる通常の演劇が、その演技を基に”観客が想像して楽しむ”ことができるものだとするならば、ミュージカルは見たもの・聴いたものがその評価に直結する度合いが強いタイプの表現方法なのではないかと思う。
見て、聴いて、単純に「すごい!」と思わせる、圧倒する要素が強くなければいけないのだ、と思う。
それを実現するためには、演者たちは芝居の他に、歌唱、そしてダンスと、求められる技能は演劇のそれよりもいくつか増えるだろう。さらに今回の演目で言えば、プリンセスというファンタジー要素の強い内容を表現するわけだから、残酷だが個々人の容姿についてもハードルは上がったことだろう。
その点でいえば、今回は演者のクオリティのバラつきが気になった。
普段札幌演劇で活躍している役者たちの芝居は一定のクオリティがあった。ただ彼らの歌やダンスがどうだったかと言えば、それは少々残念なものだったと言わざるを得ない。逆に歌やダンスで「おっ」と思う演者の芝居には苦しいものがあった。(そういった意味では、芝居は役者、ダンスはプロのダンサー、とはっきりと切り分けていた※そして歌はほとんど入れなかった『狼王ロボ』は正解だったか)
両方でクオリティを担保できていたのは唯一、青木玖璃子(yhs)だったように思う。
願わくば全ての演者がこのレベルで出力をしてくれたら、それこそ老若男女が楽しめる作品になったのではないかと思う。
演劇シーズンの演目を、観客の裾野を広げるための「演劇の入り口」と位置付けるなら、「頑張っていた」ではなく「すごかった」と思わせる舞台であって欲しかった。
脚本は良かったし、エンターテインメント的にやりたいことは分かっただけに、もったいなかった。
今後のさらなるブラッシュアップに期待したい。
text by POLPO