【特別寄稿】札幌演劇シーズンを通してみる札幌の演劇シーン。他都市からこう見えています。 寄稿者:高崎大志

札幌の演劇シーンの環境の良さ、札幌の劇団のレベルはなど、国内の地方都市の中でとても高いレベルにあります。

私は福岡を拠点に活動していますが、広島や金沢で制作講座をやらせてもらったり、いろいろな地域を見る機会がありました。

この稿では、地方都市として以下の都市をなんとなくイメージしています。札幌、仙台、新潟、金沢、名古屋、津、京都、岡山、広島、山口、高松、愛媛、北九州、福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島

中でも札幌は、劇場環境、稽古場の環境、行政のバックアップの環境、民間のバックアップの環境、いずれも地方都市の中でトップクラスです。

まず、劇場環境です。札幌駅から15分くらいのところにBLOCH、ZOO、コンカリーニョとキャパシティの異なる劇場のラインナップがあります。
大抵の地域では、こういうラインナップがありません。
これらが演劇をメインにした劇場で、民間の劇場であるというのもいい。他の地方だと多目的ホールだったりしますし、公立の劇場はいろいろな事情があって使い勝手を良くすることが難しい。
まず、この環境だけでも並ぶ都市はありません。

稽古場環境ですが、家賃が安くて専用の稽古場を持ちやすいというアドバンテージがあります。これは、維持費がかかるので一部の劇団にしか恩恵がありませんが、あけぼのアートセンターのような月単位で借りることができる稽古場があるのは大きい。
これは、作品作りの質にも大きく影響します。私としては、札幌の劇団のレベルの高さはここに秘訣があると見ています。
こういうところがある地方都市は、ほとんどありません。

行政のバックアップ環境としては、札幌演劇シーズンに代表されるような手厚いバックアップがあります。
この札幌演劇シーズンは、国内に例を見ない優れた複合演劇公演企画です。
 

 
札幌演劇シーズンには以下の特徴があります。

・地域の才能を中心として作られた作品を上演
・質の高い優れた作品をセレクトして再演
・一般市民を置いていかない、半歩先を行く演劇ならではの公演
・月レベルの長期で行い
・行政や企業を巻き込んで
・一般市民の目にとどく広報規模で(テレビとか、町中の大看板とか)
・同時期に二劇場でおこなっている

開催より、5年がたち、いくつかの特徴がやや緩やかになった感はありますが、それでも国内の他都市には見られない優れた演劇公演企画です。

他にも、北海道戯曲賞や、他地域での公演も助成の対象とする公的な助成金の存在も、他地域にはなかなか見られれない特徴だといえるでしょう。

民間の劇場が多いことは、とりもなおさず民間のバックアップが多いことを意味します。札幌演劇シーズンのような大規模な企画では、多くの民間企業も名を連ねています。
こちらも他都市には少ない特徴といえるかと思います。

他都市から見て、このような先進的な都市があることはたいへん励みになると思います。今後も札幌の演劇シーンの活性化が続いて、他都市にいい影響を与えてくれる存在であることを期待しています。

寄稿者:高崎大志
地域演劇プロデューサー/PINstage代表/NPO法人FPAP事務局長/九州地域演劇協議会理事・事務局長

text by ゲスト投稿

SNSでもご購読できます。