なぜか憎めない重婚男―イレブンナイン『あっちこっち佐藤さん』

初めて観た『あっちこっち佐藤さん』。

どんな話なの?と人に聞かれれば、「重婚したタクシードライバーが、妻二人にバレないように嘘を塗り重ねて右往左往する話」と答えると思います。でもそれだとあの、しっちゃかめっちゃかな2時間が全然正しく伝わらないよなぁ。

観ているこっちも息切れしそうなほどの勢いと、熱量のある舞台。観に行ったのは初日(藤尾仁志/納谷真大)でしたが、確かにこれはダブルキャストじゃないと昼夜2回公演とか苦しいかも…と、思うほどの熱演でした。(佐藤タロウ役の衣装が後半、汗でびっしょりだし)

嘘をつき続けるのは難しいし、苦しい。そう思うと、女二人を自分勝手に騙しているはずの佐藤ヒロシもどこか哀れに思え。劇中度々「(妻たちを)傷つけるのが怖い」といった発言を繰り返していたので悪い人じゃないとは思いつつ、観ながら何度も「もう!早く暴露しちゃいなよ!!」と、この優柔不断な男にやきもきさせられていました。

早くバレればいいと思いつつ、でもバレたらどうしよう…と、いつのまにか佐藤ヒロシ側に寄り添いながら観ていたのに。それなのに、そんな心配は全て杞憂に終わる…。妻二人が鉢合わせる場面(修羅場予想)をハイライトのつもりで待っていたので、最後の最後に「うわぁ」と声をあげてしまうほど裏切られました。(ある意味、見事なハイライトではありましたが)

嘘をつき続けるのはつらいけど、女同士の秘密を持つのは楽しいですものね。

今度誰かにあらすじを聞かれたら、「女の方が男よりも一枚上手な話」と言いたい。(言えないけど)

とりあえず、女二人の手の上で踊らされる哀れな男たちに、カンパーイ。

 

2017年8月12日(土)18:00~ かでる2.7

text by うめ

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