【特別寄稿】札幌演劇シーズン2017-夏に思うこと 寄稿者:小室明子

前向きなことだけ書きます。

札幌演劇シーズンが始まって5年と少し。最初は劇場の人として、その後は参加カンパニーの制作として、度々参加させていただいています。始まったばかりの頃、2作品一週交代で4週間公演の時代は集客にも体調管理にも(とくに冬)苦労した思い出があります。
4〜5作品で1ヶ月となってからは、多様なタイプの作品が上演され、全作を通してみると演劇という表現の多彩さを感じられるものになっているのではないでしょうか。段々と、評判がよければ徐々にお客さんが増える、ということも信じられるようになりました。演劇関係者の、「札幌で演劇で食べていきたい」という気運も高まってきたように感じています。

ずいぶん以前になりますが、「100人の演劇人が活躍する街を目指して」という演劇創造都市札幌プロジェクト発行の小冊子を作った時に、当時の実行委員長、副委員長のお三方の対談原稿をまとめながら、「これ、(私の生きている間は)札幌で演劇で食べていくっていうことの最後のチャンスかも」と思ったのを覚えています。そしてそのお三方を始め演劇外の方々からは、演劇人も〝村〟から出て社会性を持つことが必要だ、ということを折に触れて言われてきました。

 
理想と現状の間を取りながら形を変えてきた演劇シーズン、前回あたりから新たに「レパートリー作品」という、相当に背伸びをしないとないとならない枠組みが増えました。そしてこの夏のレパートリー作品、イレブンナインの「あっちこっち佐藤さん」に4300人を超えるお客様が来場したことは皆様ご存知の通り、そしてその集客を達成するために劇団が頑張っていたことも、札幌で演劇に関わる人たちにはなんとなくでも伝わっているんじゃないかと思います。

今回、数日ですが受付に入らせていただきました。たくさんの人がいた楽屋での初日乾杯、代表の納谷さんの挨拶を聞き、会場が大きくなって、それに見合う数のお客様を迎えようとすると劇団だけの力では公演は成立しないのだ、ということを改めて思い知らされました。それはつまり、4000人も5000人も集めようとすると社会性がなければやっていけない、ということなんだと思います。この荒療治のようなレパートリーという枠組みとそれに応えたイレブンナインの頑張りが、社会と関わって演劇をやっていくという方向に札幌演劇を突破してくれたように思います。

 
さて、次回のレパートリーは私が制作を担当している弦巻楽団です。教文小ホールでありますので、集客目標は2000人とイレブンナインの半分にも満たないわけですが、それでも弦巻楽団にとっては未知の数字です。
目標達成できるように頑張ろうと思う一方で1200人くらいでお茶を濁しかねなかった私ですが、ここは無理しないといけない局面だ、ということを今、ひしひしと感じています(あくまで個人の見解で弦巻楽団の意思ではありません)。そもそもレパートリーに耐えうる作品を持っている劇団なんてそうそうないのだし。与えられたチャンスを演劇関係者が斜に構えて無駄にしていたら100人が演劇で暮らしていける街、なんてことは夢物語のままだし、演劇シーズンだっていつまでも続かない。

この盛り上がりはもともと力のあるイレブンナインだからできた、ということも当然あるでしょう。しかし、札幌は作品・広報両面で頑張ればたくさんのお客さんが来てくれるほど小劇場演劇が浸透してきた、という可能性も信じてみたい。そんな気分もあります。関係者の皆さま、今シーズンもおつかれさまでした。次回、どうぞ宜しくお願い致します。

寄稿者:小室明子
ラボチ/演劇制作者

text by ゲスト投稿

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