ポップでライトでポジティブなニヒリズム。
繰り返される台詞と動作。歌と踊り。いわゆる台詞のやりとりでシーンを再現することで展開する芝居とは異なるが、「演劇」という語感がしっくりくる舞台だったように思う。原作の女生徒の独白を表現するのにとてもマッチした表現方法だと感じた。
今の自分は以前の自分とは異なる細胞でできていて、過去の自分はもういない。
それでもついてまわる暗い記憶や変えられない過去。
劣等感。妬み。ひがみ。
劇的に変わりたい。けど変われない。繰り返す日常。諦め。
といった類の物事を、イトウワカナ目線では「しょうがないじゃん!」と言わんばかりにあっけらかんと受け止め、肯定する。
それが証左にケーキひとつでテンションMAXになって歌い踊るし、スーパーの納豆売り場で王子様との出逢いを全力で夢見る。
「抗いようのないものに抵抗しても仕方ない。できることをできるだけやって死ぬまで生きましょうや!」と言われているようで、演者たちの表情や熱量も手伝い、私にはそれ(トラウマや劣等感、妬み、ひがみ、諦め)もとてもポジティブなものに映った。
introの舞台はいつも映像と音楽がシャレている。
今回も映像・音楽はAnokosの手によって制作されていて、劇の現代性(?)をとても強調していた。
映像の中で登場する「わ・た・し」の文字や、人物を表すボールの、物理エンジンを用いた挙動がとても気持ち良かった。
もしあの映像もライブで操作している部分があったとすれば、それこそイトウワカナの「演劇で音楽をやりたい」という思いが強力に実現されていたのではないだろうか。
各所の感想で語られているように、最後のシーンでのわたし(菜摘)と犬(宮澤りえ蔵)との会話が聞き取れなかったのは残念だが、それも含めた演出なのだとすればそれもまた良し。ふたたびお目にかかる際にあらためて確認したいと思う。
2017年8月21日19時30分 コンカリーニョにて観劇
text by POLPO