【特別寄稿】燃焼!札幌演劇シーズン2017夏 寄稿者:やすみん

いずれの作品も、燃焼した感がある。体力消耗感。動きが激しいものが多かったせいか。お疲れ様!

レパートリー作品、イレブンナインの「あっちこっち佐藤さん」は、入場者数4335人という偉業を成し遂げた。本当におめでとう。劇の内容はもとより、集客努力に感動した。大きな期待を背負いながら、主役ダブルキャスト、前説の工夫など、血と汗の滲む努力だったと思う。一方、これが、かでる、教文といった大会場を使用する、という今後の劇団へのプレッシャーにもなる。やればできるじゃん、という訳だ。劇団に、チケットセールス、営業、という負担が大きくなる。有名人ゲストを招くことも必須となるか。請け負える劇団は少ない。

集客数をひとつの指数とすると、イレブンナイン、yhs、パインソー、introという”シーズン常連”劇団たちが連なる中、やや不安視する声もあったもえぎ色が、うれしい快挙を見せた。集客数1380人という数字で”常連”を上回った。ファミリー層を呼び込んだもえぎ色は、新たな常連となるか。

順を追って見ていくと、トップバッター、yhs 「忘れたいのに思い出せない」が、老い、介護をめぐる家庭、社会を描いた唯一のしんみり派で広く大人の世代を集めた。続くパインソー「extreme+ logic(s)」は、コミック&ゲーム感覚の戦隊モノ。小劇場の良さを活かし、結末を観客投票で選ぶ、という新しい手法を取り入れて舞台と観客をより近づけた。今後、真似る作品は出るか。もえぎ色「Princess Fighter」はシーズンには目新しいミュージカル分野でナイストライ。イレブンナインの爆発笑劇がどっかーんとあり、最後を、内省的でありながら元気印の身体表現、intro「わたし~The Cassette Tape Girls Diary~」で終わった。ざっくり言ってしまえば、5作品中4作品が、楽しく明るい派。

あっちこっち佐藤さん」は一応既存脚本に基づくものの、変更・脚色が著しいし、他4本は原作はあってもいずれもオリジナル脚本。それはそれで素晴らしいが、ラインアップとして、願わくば、深めの文学的古典・名作脚本が一作くらいは欲しかったところだ。

ここで、基本のおさらいをすると、札幌演劇シーズンは、札幌市の助成やスポンサー、ボランティアの協力・支援を受けて、現在の、レパートリー作品1本、ほか4本、いずれも札幌で生まれた演劇を上演する。応募制で、基本的に応募した劇団の中から選ばれる。

「札幌のお客さんはやさしい」とは、道外からきた劇団が終演舞台挨拶で必ずといっていいほど言う言葉だ。よく笑い、よくすすり泣き、一緒に盛り上げてくれる温かい観客だと感謝する。その通りだ。手拍子のノリもいいし、些細なギャグでも逃すまいとよく笑う。え?ここで?という人もいる。劇中、登場人物が死んだり、悲しんだりすると、もれなくやがてすすり泣きが聞こえる。「やさしいお客さん」は札幌演劇シーズンでも同じだ。

やさしいお客さんがいて、発表の場のフレームもある札幌の演劇環境。あとは、コンテンツ、作品だけ。こんな環境がこの大都市であるとは、びっくりぽん(古い!)ではないか。そりゃ、チケット売ってくれよ、とか制作費はずんでくれや、とか、劇団にもいろいろ言いたいことがあると思うが、精魂こめた作品が注目を浴びて、より多くの人々に観てもらえるチャンスを逃してほしくない。札幌の劇団の皆さんは、ぜひ今後ともシーズンに名乗りをあげてほしい。フレームがあるうちに。いつまでもあると思うな、支援と金、というわけだ。

そして、やさしい札幌市民の皆さん。納税者である皆さんには、演劇シーズンによい作品が観たい!と要求する権利がある。しかし、劇団の応募なしには選択も叶わないのだ。だから札幌演劇で、また観たい!と思った作品があれば、アンケートにでも「シーズンに応募して」と書いて劇団に伝えてほしい。

ここまでお読みいただきありがとう。この「札幌観劇人」サイトは、シーズンに拘わらず、皆んな演劇が好きだから、応援したいから、やっている。筆者も劇団に制作費をどーんと出してあげたいところだが、そんなお金もないので、できることをしようという思いから書いている。よ〜くおわかりだろうが、劇団員は、批判的な内容があってもめげてはいけない。むしろ、批判にこそ耳を傾け、成長の糧とするべきだ。「すごくおもしろかった~、よかった~」というツイートを見て、ああ、やってよかったと肩たたきあい満足したら、嫌なものにも耳を傾けよう。でないと、覚悟して書きにくいことを書いたほうも虚しかろ。懸命にオブラートに包んだ甲斐もなかろ。多様な人間がいるのだから、多様な感想があって然り。自己陶酔に陥ることだけは避けよう。劇団員は崖から這い上がる獅子の子たれ!

さて今後の期待。ダンサー、舞踊家、音楽家、人形師、など、多様なジャンルのアーティストが、どんどん俳優より雄弁な演劇表現をしてくる時代だ。演劇のプロとは何か。その答えを知る演劇シーズンであってほしい。

text by やすみん

SNSでもご購読できます。