ファンタジーから現実へ 『世襲戦隊カゾクマンⅡ』

 地球を守るヒーローを代々受け継いできた家族、というとっぴな設定ながらも、普遍的な家族の姿を笑いと涙で描いた。東京の劇団「ONEOR8」の田村孝裕の作演出で、2014年に上演した「カゾクマン」の続編。

 カッコ良いヒーローかと思いきや、失態が続き、「国民のお荷物」「税金泥棒」などと世間から非難されているカゾクマンの5人。宿敵ミドラーに、将来、レッドを引き継ぐであろう孫をさらわれたカゾクマンと、ミドラーとの最終決戦までを描く。
 父レッドのどうしようもない頼りなさ、母ピンクの夫を尻に敷いている勝ち気ぶり、息子ブルーの妻に淡い恋心を寄せる「男前男」など、キャラクターは曲者ばかり。が、さすが舞台やドラマなどで活躍している役者のみなさん、観る側もどーんと構えて観る余裕がある。戦闘シーンは映像と身体の融合で、CGをアナログ化したかのよう。毎週日曜に放送されているヒーロー戦隊好きとしては、ここが一番のツボだった。
 引退を迷い、子供のためにカゾクマンを辞めたいなど、家族はそれぞれ悩みを抱える。展開はベタといえばベタ。でも、実は宿敵ミドラーも世襲制で、ミドラーは婚期を逃して未婚、跡継ぎはいないと明かされ、現実の各界の世襲問題が頭をよぎった(この場面で涙する人もいた)。

 歌あり、アクション(?)ありの舞台だが、ラスト、父は家族に内緒で株を運用中でしかも急落中、息子はファンの女性とメールし、娘は自分の子の父親が誰か分からない-など、それぞれの秘密が明かされる。そうよね、一番近くにいても本当のことは分からないよね、と観客をファンタジーの世界から現実に一気に引き戻す。隣にいたオバチャンの、大笑いからの沈黙というリアクションが良かった。

・8月4日19時、道新ホール

text by マサコさん

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