難しすぎた… クラアク芸術堂『半神』

難しすぎた。
難しすぎたが、ストーリーを追いかけると…。

知能は発達してないがかわいい顔を持つマリア(池江蘭)。一方、話すことはできるが醜い顔を持つシュラ(柴田知佳)。二人は胴体が繋がっているシャム双生児。シュラの栄養がマリアに分け与えられる。
胴体が繋がっているがゆえに次第に変調を来し、10歳の誕生日に二人は手術を受けて切り離されることになる。しかし生き残るのはどちらか一人と聞いておろおろする二人の父(剣崎薫)と母(五十川由華)。体はふたつなのに心臓がひとつ。生き残るためにはその心臓をどちらかが得なければならない。

結果的に生き残ったのはマリア、と思いきや、マリアが発する言葉はシュラの口調。
実は、手術の最中に化け物たちに翻弄される。スフィンクス(信山E紘希)、ハーピー(懸梨恵)、ユニコーン(有田哲)、マーメイド(丸山琴瀬)、ガブリエル(山木眞綾)たちがマリアとシュラをこの世の果てに引きずり込もうとする。化け物に負けそうになる中で、マリアとシュラはお互いの「心」を差し出す。その結果、この世に戻って来たのは、マリアの体を持ちシュラの心を持った女の子だった。

キーワードは「2分の1足す2分の1は4分の2」。
この謎を解こうとする低血圧の数学者(三島祐樹)。この数学者は高血圧の医師と双子。シュラとマリアの執刀医は高血圧の医師。そしてもうひとり、「2分の1足す2分の1は4分の2」の謎を解こうとするシュラとマリアの家庭教師(遠藤洋平)。

そもそも萩尾望都(懐かしい名前!)の原作で野田秀樹率いる夢の遊眠社の作品らしい。小佐部氏はこの作品をVHSで観て、「わけがわからないのに面白いと思った。」という。彼自身、「わかりやすく作ったつもりだが、それでもやはりわからないと思う。」と書いているように、まさにカオスの世界だった。

振り返ってみればストーリーは分かりやすい。しかし演出が凝りに凝っている。ここが分かりにくさの原因かも知れない。幕が上がる前に、出演者が舞台上で雑談しているような演出があり、そのまま演劇に入るが、これも意図がつかめなかった。場面転換も早くて付いていくのがしんどかった。衣装も舞台も、照明も非常に凝っていた。ただ、音楽(BGM)がちょっとベタな感じだった。正確には思い出せないが、クラシックやタンゴなど、ポピュラーな音楽を使っていたことが気になった。でもサンピアザ劇場って、意外と音がいいことに気付いた。

訳が分からないこともあり、中盤ぐらいまでは感情移入できなかった。さっきも書いたが場面転換も早くて多くどの場面なのかつかみにくかったことも分かりにくさの要因なのではないだろうか。
とはいえ、どの役者さんもうまかった。シュラとマリアの父親役の剣崎薫さんは声も良く、好感が持てた。声がいいといえば久しぶりに観た信山E紘希さんも良かった。家庭教師役の遠藤洋平さんも熱演していた。
何より、札幌で『半神』をかける小佐部氏のチャレンジ精神に乾杯。

ストーリーを追いかけていくうちに、『どこかで同じようなストーリーに出くわしたことがあるんだけどなあ』と思ったが、いまだに思い出せない。まあ、仕方ない。
難しすぎた。

9月3日14時 サンピアザ劇場

投稿者:熊喰人

text by 熊喰人(ゲスト投稿)

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