巧拙ではなく。──北海学園大学演劇研究会『零番目の七不思議』

演研さんを拝見するのは久しぶり。しかも新人公演。2チーム制だったのですが片方しか観ず、演出と役者の違いでかなり作品の見え方が違っていたとあとで知りちょっと残念。

僕が観たのは、作者さんが演出したチーム「零」の回でした。

冒頭、裁判のシーンから始まったので、「被害者─加害者」路線の話かと思ってしまい、ちょっと肩すかし。意図としては、事故そのものを見せないというのと、事故によるそれぞれの悔恨の情を印象づけるためだとは思うのですが。

オープニング映像の入るのがタイミング的にすこし後倒しすぎるような気はしましたが、映像のカメラワークがとても良かった。(最近はさまざまなエフェクトや編集に力を入れた映像も多いのですが、長回しのカメラワーク自体に凝るというのは個人的には大好きです。)

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展開的にはいくつかのお決まりの着地点が予想されてしまうこういったストーリーでは、そこまでの過程で何を見せるかが大事なような気がします。それは、「友達の死」以降の時間をそれぞれが何を考え、この芝居の「今」を迎えたのかも大事ですが、片側で、日常の取るに足らない学生生活のあれこれ(授業や、先生とのやりとりなど)をリアルに(あるいはノスタルジックに)しっかりと描いてこそ、観客が物語に没入できるのだと思うのです。

例えば、男女の先生はどうやら前からつきあっているようなんですが、それは生徒公認なのか、公私の別はどの辺にあるのか、それを生徒達はどう思っているのか、など。…これはセリフで語られなくてもいいのですが、その辺がただ脚本まかせで(演技の巧拙ではなく)演者や演出がどのように裏設定をしているのかが僕には見えてこない。これはコメディだろうとシリアスだろうと、大事な部分だと思うのです。よくある言い方ですが「幽霊が現実に現われる」という「大嘘」を成立させるために、細部はリアルに見せてほしかったなあというのが実感。

。。。と、しかめ面しい話になってしまいましたが、小ネタやエピソードなど60分という尺でかなり盛り込んだつくりで、前説や客出しも含め新人公演の新鮮さを感じるとても素敵な時間でした。(上級生や、卒業して若手劇団を立ち上げ活躍しているOBたちの多くも、みんなこういう初舞台を踏んでいったんだろうなあ。)

(2017/09/16 19:00〜 演劇専用小劇場BLOCHにて観劇)
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北海学園大学演劇研究会 夏の新人公演2017『零番目の七不思議』
─彼らは狂ったように『今』を謳歌し、未来から目 を背けて生きている─
2017年9月14日(木)〜17日(日)

主人公たちは深夜の学校に忍び込んで、学校の七不思議を検証中。すると出会ったのは、どこか懐かしい女の子たちの 霊で・・・・?

未来を亡くした少女と未来を欠くした少年の出逢い が、止まった刻を動かしていく。

・・・・これは「あの日」に置いてきた君を。未来 を。僕らを取り戻すための、物語。

【脚本】 串間 俊哉

【演出】 串間 俊哉(チーム零) 横山 貴之(チーム漆)

【キャスト】 (チーム零) 湯本 空、本庄 一登、高倉 弘樹、高倉 綾乃 田中 友登、中畑 栞奈、笹山 春奈、山本 凌雅 道場 風音、伊藤 瑞恵、浅川 侑太、三浦 滉大

(チーム漆) 中村 昇太、千葉 超與、小川 大揮、五島 基愉 菊地 健太、中谷 実里、竹道 光希、横山 貴之 中田 潮音、見上 綾理、佐々木 俊哉、石澤 恵栄

text by 九十八坊(orb)

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