バッティストーニ、遂に 札幌文化芸術劇場プレイベント『アンドレア・バッティストーニ×札幌交響楽団』

先ずは、観「劇」の感想ではないことをお断りします。その上で、来年10月に完成、こけら落としが行われる札幌文化芸術劇場のプレイベントとして行われた、札幌コンサートホールKitaraでのコンサートがあまりに素晴らしかったので書きたいという情熱に駆られました。お許しください。

2018年10月6日開館。札幌の舞台やアートパフォーマンスの新たな発信拠点となる、約2,300人を収容することが可能な札幌文化芸術劇場のこけら落としは、北海道初となる多面舞台に相応しいヴェルディの晩年の傑作オペラ「アイーダ」(全4幕、イタリア語上演・字幕付き)と決まっています。神奈川県民ホール、兵庫県立芸術文化センター、iichiko総合文化センター(大分県)、東京二期会との共同制作で、イタリアのローマ歌劇場との提携公演でもあります。「アイーダ」の指揮を執るのは何と弱冠30歳にして、世界中で一番注目を集める若手マエストロの一人、天才とも評されるアンドレア・バッティストーニです。バッティストーニが「アイーダ」を指揮すること自体も素晴らしいのですが、新劇場のこけらとして札幌まで来てくれることが何ともお祝いムード一杯です。ですが、そもそも札幌での2公演、約4,600人を満席にできるのかとの危惧が関係者の間であがっていました。札幌には北海道二期会もあり、気を付けてみると児童向け含め多様なオペラが上演されています。この賑わいには、声楽家で北海道二期会理事長、北海道日伊協会会長も務める三部安紀子先生の尽力があります。しかし、オーケストラピットもある大劇場での本格的なオペラ公演なんて、札幌っ子は初めてです。その宣伝の意味もあって、こけら一年前のタイミングで、バッティストーニの来札が実現しました。マエストロは、公演の当日午前中に、建設中の札幌文化芸術劇場を視察、「建築中のテアトロを見るのは初めて」とご満悦だったそうです。

当夜のKitaraは文字通り満席でした。それにしても圧巻!鳴り止まぬ万雷の拍手とクインティブルにも及ぶカーテンコール。演奏中もそうでしたが、総毛立ちしました。ヴェルディの「ナブッコ」に始まり、大好きなプッチーニの「ジャンニ・スキッキ」、「修道女アンジェリカ」。交響楽的前奏曲を挟んで、再び「トスカ」!「蝶々夫人」!とよく知られているアリアの数々が。前半の締めは再びヴェルディの劇的な「運命の力」序曲。こけらでアイーダを演じる木下美穂子の伸びのある艶やかなソプラノも圧倒的。後半はレスピーギの交響曲「ローマの松」。第4部のアッピア街道の松のなんとも壮麗な音の祝祭。力強く情熱的にしてかつ繊細。イタリア人らしいその指揮スタイルも印象的でバッティストーニはその天才ぶりをいかんなく発揮しました。それほど札響は聞いていませんが、素晴らしいハーモニーを奏でていました。会心の演奏だったことは、コンサートマスターの満足そうな高揚感によく表れていました。指揮者が違うと、ここまで音が粒だつんですね。もう来年の「アイーダ」は成功間違いないでしょう。チケットはまもなく発売されるそうです。オペラというとなんだか高尚なもののように思ってしまいがちですが、何と言っても謳って語られる音楽劇です。むしろ粗筋がわかっていれば面白いはず。指揮とは別に演出家もいますので、舞台美術含め大いに期待したいと思います。

9/15(金) 19:00~札幌コンサートホールKitara

 

text by しのぴー

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