街を体感する演劇 ― 指輪ホテル『Rest In Peace, Sapporo~ひかりの街をはしる星屑~』

1周1時間弱の市電の中で、演劇を行うだけかと思っていました。〈市電やその周辺地域を舞台に~〉と聞いていたので、市電から見える景色に少し触れるだけだと思っていて、座席におとなしく座っていればいいのかと思っていました。が、想像と全然違いました。

集合場所は狸小路と駅前通りが交差する、大通すわろうテラス。まず参加者は旗を渡され、全身灰色の人&赤い衣装の楽団に先導されながら(街ゆく人々に好奇の目で見られつつ)徒歩で南下・ススキノ交差点の前へ。ニッカのオジサンを眺めながら、自分たちが乗る市電(指輪ホテル号)を出迎えます。で、そのまま車内から役者さんが手を振る市電と並んで歩きつつ、西4丁目の停車駅へ。なかなか市電には乗せてもらえません(笑)でも大通~ススキノの人混みの中、旗を持って音楽に導かれて歩くうちに自分もパフォーマーの一人となったような気持ちがし、なかなか楽しくなっていました。

で、乗車。役者さんが途中の駅で降りたり乗ったり、市電から付かず離れずの距離で一緒に市内を回ります。普通に市電を待っていたお客さんがその度にギョッとした顔を向けたり(いきなり車内からウサギのお面被った人が降りてきたら、驚くよね…)不思議そうに眺めているのを見ると、こちらも悪戯を仕掛けて成功した側のような、共犯者のような気分に。暗くなった街を走る市電の中、外からはよく見えないかもしれないけど、中ではこんなことが行われてるんだよーと、道行く人に教えてあげたくなりました。

 

4プラの外壁を上る人。市電沿線の古民家やハローワーク、コンビニの前で待ち構え、こちらを見つめるウサギたち。電車事業所でのダンスパーティー。市電に取り残されて、停車駅で法螺貝を響かせる人。最後は今年で取り壊される古いビルへ。パチパチと窓の明かりが点滅して、拍手しているみたいにも、まばたきしているみたいにも見えました。藻岩山と三日月に見守られて、停車駅をめぐる時間。芸術「祭」という、非日常。ちょっとしたハレの日に相応しい時間だったと思います。

ただ惜しむらくは、各日2回公演×2日間しかなかったこと。各回の定員が30名なので、全部で100人強の人しか公演を観ることが出来ません。前回の来場者数が50万人弱だった芸術祭のイベントとしては、あまりに観客数が少なくて勿体ない!普通の市電も運行している中で、時間の制限等大変な事は観ていて感じたのですが、もしまた機会がありましたら、せめて公演日数を増やす等もっと多くの人が楽しめる(目にすることが出来る)ようになればいいなと思いました。

 

9/24(日)17:20~ 札幌市電にて

text by うめ

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