空知物語  サンピアザ劇場企画公演・プレミアムステージ/札幌座第53回公演 『空知る夏の幻想曲』

時は現代。
場所は三笠の幾春別・奔別炭鉱の立坑下。

すでに廃鉱になっているその炭鉱の坑道で、鷺沼産業と油屋燃料というふたつの組織が利権をめぐって抗争を繰り広げていた。そこに招かれたのは空知で良質の小麦、きたほなみとゆめちからを作っている農家の3代目。鷺沼産業の社長夫人、鷺沼洋子が新事業として小麦を使った事業を展開したいと構想していたからである。

訳が分からない中で抗争に巻き込まれた農家の3代目は、抗争の内偵を進めていた空知総合振興局(部課まで紹介していたが忘れた)の担当課長から空知の歴史を聞かされる。警察も自衛隊も相手にしない抗争だが空知の振興を憂う振興局が内偵を進めていた。しかも農家の3代目は空知総合振興局の女性職員といい仲になっていく(これが大団円に繋がる)。
一方、抗争状態にある鷺沼産業の鷺沼洋子と油屋燃料の油屋チョモランマは、実は幼なじみで一時は恋仲にあった(固有名詞の漢字はいずれも想像ですが)。
坑道に閉じ込められた6人は脱出を試み、幾春別川のほとりに出た農家の3代目は、かつて炭鉱夫たちが見上げたであろう空を見上げて往時を思う…。

お芝居が始まったばかりの頃は、展開が早くセリフ回しも早く、『どういったストーリー?』と思ったが、徐々にお芝居の流れが分かりはじめると『なるほどね』となった。
このお芝居は、舞台セットも良く出来ていたし、何より、舞台上で本当にパンを焼くという「荒技」を使ったところに面白さがあった。会場内にほんのりとパンのいい匂いが漂っていて、食べたくなったほどである。坑道ということで照明も落としていたが雰囲気が良く出ていた。もちろん、斎藤歩氏お得意の管楽器演奏も歌も入っていた。

ただ、先にも書いたが、最初の数分間はセリフ回しが早く、時々聞き取れない部分もあった点が残念だった。また油屋チョモランマがスポーツカーに乗ったような演出にもやや違和感があったし、空知の名産品を並べ立てて食べる風の演出にも違和感を覚えた。これらはいずれも最初の場面。観客としてはここを乗り切ることができるかが問題で、小生の場合、もう少しこの場面が長かったらついて行けなかったかもしれない。それぐらいの「危うさ」があった。
しかしそこは斎藤歩氏。壊れかけそうなストーリーを「空知物語」にまとめ上げたのはさすがである。

個人的には、ここ数年、空知の旧産炭地に興味があり、三笠の幾春別・奔別炭鉱跡にも行ったので、風景を思い出しながらストーリーを追いかけられたので実感が湧いて面白かった。とくに空知地方がもともとは泥炭地で土壌改良して現在のような畑に変えたという話は知らなかっただけに勉強になった。
出演は、斎藤歩、佐藤健一、山本菜穂、高子未来、熊木志保、木山正太といった札幌座のお芝居ではお馴染みの皆さん。

このお芝居は江別、帯広、石狩、中標津での公演を終えてサンピアザ劇場、そして北広島、岩見沢での公演が控えているそうです。
サンピアザ劇場での公演はあと1回、19日(木)19時です。お時間のある方はぜひサンピアザ劇場にお越しください。観劇された方には、もれなくトモエの昆布醤油(1リットル)がもらえます。もちろん、小生もありがたくいただきました。(笑)

10月15日14時 サンピアザ劇場

投稿者:熊喰人

text by 熊喰人(ゲスト投稿)

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