総合○○エンターテイメント ニッポンの河川『大地をつかむ両足と物語』

役者さんが舞台上で音響や照明を操作しながら物語が進んでいくという事でどんな風なのかと期待して足を運んだ。
会場に入ると、ステージ上中央に四点式テントのような骨組みにLEDが巻きつけられた手作りの照明装置があり、それを囲むようにして座席がある。フェスだ!そう直感した。これはお芝居であると同時にフェスなんじゃないか、という気持ち。東京で野外公演をしていたという話をツイッターで目にしていたのもある。
やりたい芝居をどこでもやれるように、ミニマムであるという利点をどこまでも追求、ホームセンターでそろう道具を使っている、そんな劇団のコンセプトを前説にて聞いていると、役者さんが照明装置を消してお芝居が始まった。
物語は、とある家族を中心とした、同時並行世界のフィルムを切ったり貼ったりして一本の映画に繋げたような作品で、内容を説明するのは難しい。親子愛と捉える人もいるだろうし、人間の探究心についての心象と受ける人もいるだろう。
僕がひとつ印象に残っているのは、この世の中に目を瞑って、あえて暗闇の中で手を伸ばしてみる、というような内容があった、と思う。それが心に残っているので、たぶんきっとあった。
内容が曖昧なのは、まずそのテンポが基本的に速かったからだ。見ているだけで心拍数を上げる、心地よいスピード感。これは知っているぞ、と少し考えると、わかった。プロレスだ。しかも、僕の好きだった90年代プロレス、ジュニアヘビー級のスピード感!ステージ上、さらに舞台となる部分に仕切られた黒いテープ、その四つ角のいわばリング脇に置かれた照明装置や何かしらの小道具。どんな技が、どんな反則が、どんなドラマが。次々と変わる場面転換のたびに、あの時の興奮と同じものを感じた。下ネタやイリーガルな小ネタを挟んでくる感じが、刺激的で、痛快で、とても愉快だった。
とりあえず全部詰め込んだから、まあ見てみてよ、笑ってよ、考えるのは後にして。そんな自信たっぷりの無言アピールに、あの日の好きだったプロレスラーのたくましい面影が浮かんだり、芝居の内容を思い出したりして、帰り道がとても有意義だった。
この回は特殊で、アフタートークの変わりに公開ダメだし、手直し、があった。役者さんの再現度も凄いけれど、脚本・演出家さんの切り取ったシーンに対する深度、耳あたりを考慮した語感に対する貪欲さも強烈だなとおもった。
闇の中でLED付ヘルメット(輝度が高すぎて役者さんは周囲を見えにくい、アフタートークより)や、腰に下げたラジカセ、脇に差した点灯棒、ヘリを表現したドローンなど、物々しい装備を全く気にかけさせることのない雰囲気、熱量、表情でひきつけるといった仕組みは、未来の演劇とか表現方法の可能性うんぬんを感じたが、何より今回の役者さんの表現力に賛辞を送りたい。めっちゃ面白かった!
 
 
11月17日 19時30分 コンカリーニョ

投稿者:橋本(30代)

text by 招待企画ゲスト

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