第67回全道高等学校演劇発表大会 その3

●札幌山の手 「狼少年はここにいる」 既成

札幌の劇団「イナダ組」の稲田博の書き下ろし。現代と1970年代(間違っていたらすみません)を行き来しながら、その時代の高校生の姿を描き出す。

 

毎度ながら、いろいろと豪華な山の手。人数も多いし、一人一人のキャラクターも立っているし、セットもこだわっている。が、どうしてなのか。全道大会ではいつもせりふが走ってしまう。今回も「もっとゆっくり~、抑えて~」と心で叫ばずにはいられなかった。もともと情報量の多い脚本だ。だから、いくつか重要なせりふが聞き取れずに、最後まで「?」のままだった設定(伏線)も少なくない。

 

出だしから客席をにぎやかしたり、号外を配ったりと会場を大きく使うのも、山の手らしいなぁと思う。それでも、せりふが観客に届くかどうかも重要だ。ところで本作は規定の60分で表現しきれる内容なのだろうか?90~120分くらいあるところを、60分にまとめたのかなぁなんて考えてしまった。

 

●北見北斗 「古い引き戸は重い」 生徒・顧問制作

高齢・中年の役を違和感なく演じられる生徒がいると、作品自体に安定感を感じる。しかも、そんな生徒がいる学校は面白い作品を出してくる-というのが、ここ数年、高校演劇を観続けた中での発見だ。北見北斗もその中の1校。「常呂から~TOKORO curler~」のお父さん、「tomorrow」で押し入れに折り鶴(だったような)を詰め込んでいたおばあちゃんなど、客席から観ていて「あれは高校生なんだよな」と感心してしまう生徒がいた。今回は多恵子(だと思う)。「こういうおばちゃん、確かにいるわ!」と喜んだのは私だけではないだろう。

 

神社の社務所で、獅子舞の練習をする中高生。どうやら神社の娘で彼らの同級生が引きこもっているらしい。明るい会話の中に不穏さが感じられる。神社の存廃や地元から若者が減っている現状(地元から札幌に進学したという女子が出てくる)など、どこのマチにも起こりえるようなことが背景として描かれる。しっかりとした取材をして舞台を作り上げる北見北斗らしい作品だ。

 

が、ラスト、獅子舞の練習をしている部屋の隣に、同級生が引きこもっているという事実が明かされる。受け取り方は人それぞれだが、私は「ホラー映画みたいだ…」と思ってしまった。その瞬間、冒頭から組み立ててきた物語が一気に崩れてしまったのである。本作を観て胸が詰まった人もいただろう。それでも私は、違うラストで締めくくってほしかった、と今でも思う。

 

続く

text by マサコさん

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