劇団コヨーテの舞台を初めて観たのは、3年前の「愛の顛末 boys be Sid and Nancy」だ。もともと予定になかったところを、駆け込みで観に行ったら、「札幌でもこんなの(いい意味)を作る人がいるんだ」と感激した。そこまでの驚きはないけれど、本作も散文詩のようなせりふ、支離滅裂な設定が絡まってはほぐれていく様が楽しかった。
久遠茶太郎(亀井健)はスーパーでアルバイトをしている中年男。上司の物梨加(脇田唯)に恋をしている。一方、同じマチの公園では「大家族」と称する宗教団体のような一派が暮らしている。余命2カ月と宣告された物梨加、「神」と言われる清川架子(ナガムツ)ら、さまざまな境遇、思想を持つ人々が出会っていく。
…と、こんな内容だったと思う(間違っているかもしれない。あしからず)。観る人によってはハッピーだったり、最悪な状況下で生きる人たち-など、光を当てるところが違うだろう。認知症を「まわりの気を引きたい老人(高齢者)の思春期」(だったと思う)と言ってみたり、差別用語が出てきたりする。ここで笑っていいのか、笑えば自分がそう思っている(差別している)ことじゃん-、などと自問自答しながら観た場面もある。「愛の顚末」の後、演劇シーズンに参加した同作の再演を含めて、コヨーテは札幌の観客嗜好に合わせたような作品が続いたが、本作は原点回帰とも言えるだろう。亀井健の脚本は、不親切だけど観客を思考停止にさせない。それが魅力だと気付いた。
それにしても、冒頭の「たくあんの味は甘いよ」というせりふ。ずるすぎる。
・11月20日 BLOCH
text by マサコさん