【特別寄稿】TGRはジャンルを超えた劇場祭  寄稿者:立川佳吾

 
今回2017年のTGRで優秀賞をいただくことができました。
この場をお借りして、あらためてお客様、関係者の皆様ありがとうございました。

12年前TGRが始まったころは、ジャンルという分け方をすると「演劇」の作品に役者として出演をしていました。それがひょんなことから「人形劇」の作品を上演することになり、2012年のトランク機械シアター旗揚げの作品から「人形劇」でTGRの大賞にエントリーしてきました。

当時のお話を少しすると、演劇のジャンルから人形劇の作品を作る人はいなかったので、こぐま座を借りる段階からとても大変でした。
「本当に人形劇をやるんですか?こぐま座では演劇はだめですよ。」と言われてきたため、台本を2012年の3月段階で提出をし、保育士のメンバーが人形劇講座に参加をし3度ほどプレゼンをしてようやくこぐま座の利用の許可がおりました。
演劇と人形劇は違うもの。
作品を作る前に感じたことでした。

そして2012年の初演、「ねじまきロボットα」。

「なぜ人形劇だったのか?」「人形劇である意味は?」「これは演劇だ。」「演劇でやればよかったのではないか?」「役者にばかり目が行く。」
という意見を多数いただきました。

演劇からも、人形劇からも、ダメだと言われたような気がしました。

やっぱり人形劇は無理なのか。と思ったりもしましたが、子どもたちから「また来年も見に来るね」という言葉と、「出演していた人形の絵」が届きました。
なにかは届いていたのかもしれない、と思えました。
そしてその年「またやるから待っててね。」 という約束が成されて、「ねじまきロボットα」のシリーズはいまも大賞エントリーを続けています。

トランク機械シアターが作品を作る上でこの時から「ジャンル」に縛られるのはやめようと思いました。
目の前のお客様に楽しんでもらうということに、改めて気づかせてもらえました。
そして会場に入ってから帰るまで。いろいろな楽しいが詰まってる場所にしようと考えるようにしました。
そして「ジャンル」で分けられてしまうなら、トランク機械シアターの作品が「新しいジャンル」になろうと考えました。
 

 
「ジャンル」でいうと、TGRは演劇・人形劇・オペラ・お笑い・伝統芸・大道芸などなど、札幌の対象の劇場で行っていて、劇場の推薦があればどんなジャンルでもエントリー可能という、異種格闘技戦が前提のお祭り「劇場祭」です。
こんな異種格闘技戦の審査基準はどこにもないだろうし、どこでもやっていない。
審査員は毎年頭を抱えるでしょう。基準があるとしたら審査員ひとりひとりの中にある面白いの基準。それがその年に一番面白いと思ったもの!としか言いようがない。

それぞれに面白いはあるし、その時の審査員の面白いなんて分からないし、審査員全員が同じものを面白いと思う感性ではない。
でもそれは、通常に公演を行った時、誰が観に来るかわからないお客様と同じだと思います。
だから、誰かには自分たちの面白いは響くかもしれないし、全然響かないかもしれない。
ずっと同じ審査員なら、面白いの方向性が分かるかもしれないけど、審査員は公募もあったりで3年で交代する。
だからどんなに賞が欲しかろうと、自分たちの作品を上演することには変わらないのです。

じゃあ、エントリーしなくてもいいか。と思ってしまうかもしれないけれど、それはとてももったいない。だって審査員は絶対に観に来てくれるんですから。

「ジャンル」というものの怖さは、人形劇だと「人形劇は子どもむけなんでしょ?」というようなイメージがあり、大人の人だけでなかなか観に来ないという戦いがあるということ。
審査員の中で人形劇だったら自分では観に来なかったかもしれないと教えてくれた方もいました。
TGRの大賞・新人賞にエントリーすることで、通常に公演をしていただけでは出会うことがなかった人に観てもらえるというのはとても価値があると思います。
最近TGRには参加するけれど、大賞にはエントリーしないという作品が増えていますがとてももったいないと思います。
新しい人に観てもらうチャンス。
確実に審査員の7名は観てくれるんです。これはすごくお得だと思います。
 

 
今回賞が新設されたり、各賞が変わったりしましたが、これにより「作品」や「団体」の見本市的な要素が増えたのではないかと思いました。
今後はもっとジャンルにとらわれず、審査員の方々がそれぞれに面白いと思った作品が紹介されていくことを期待します。
面白いの価値基準が全然違う審査員がそれぞれ、「私はこの作品がとても面白い」という主張がされていくことで、ジャンルが違うからいままで興味を持っていなかった人たちの目にとまり「作品」や「団体」が観てもらえるようになっていけばいいなと思います。

作り手側は色々な「ジャンル」から作品を応募して大賞に新人賞にエントリーする。
少なくとも3年はエントリーして自分たちの作品を観てもらうことで、審査員にたくさん困ってもらいましょう。
そして審査員の3年の任期が終わった後、自分たちのファンになって自分の意思で公演に来てくれるくらい面白いと思われ続けるよう、作品を上演し続けていきましょう。

TGR2018もどうぞよろしくお願いいたします。

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寄稿者:立川佳吾
トランク機械シアター代表 脚本・演出・役者・ナレーター
※トランク機械シアター本公演vol.7『ねじまきロボットα~ともだちのこえ~』 TGR札幌劇場祭2017 優秀賞を受賞

text by ゲスト投稿

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