中高生チームも観たくなる:コンカリーニョプロデュース『鰤がどーん!』(大人チーム)

終演、会場にいて拍手をしているこの瞬間が、暖かく貴重な人生の一コマだと確信できた。
コンカリーニョから幸せな気持ちで外に出ると、琴似駅の上に輝くブリが跳ねている!と思ったら、三日月だった。よく見たらサヨリくらいだったけど。
「鰤」が読めない、え?何がどーん?と、当初思ってから観劇するまで、何も予習していないのでブリガドーン現象とか、水木しげるとか、高校演劇とか、何も知らずに観た。まあいつもそうなのだが。だから海鮮丼屋さんが舞台かと思っていた。見始めてからは、高校演劇部がモチーフなので、北村想氏風の高校演劇応援歌かと思ったが、それだけではなかった。青春賛歌、人生賛歌だった。背景に、東日本大震災があり、ああ弱点を突かれた、という感じ。記憶に新しい癒えぬ悲しみをチラチラさせられると、感情移入させられやすい。津波にのまれていった仲間たち、生き残った者の孤独、帰ってこないあの屈託のない日常。もう目が潤む。400年間津波を封じてくれる観音様とか、本当に本当にあったなら・・。コミカルに笑いに包みながら、その祈りは切実で優しい。「恐かったね、もうそんなことが起こらないところへ行って、大好きな演劇を続けよう」と言われているみたいだった。

高校演劇部出身者や関係者にはク〜っとたまらない面白さだろう。劇中劇の作品のハイライトや、演劇コンクールの地区大会の場面なんか、経験していない者でもその空気がよく伝わる。

「こんな田舎で演劇なんかやったって何の役にも立たない!」と主人公の刺さるようなセリフ。そこから不思議な出会いを経て、1年が400年分に相当する時空の世界、奇妙なブリガドーン村で教師となり高校演劇部顧問として演劇を思う存分続けていく。終盤に畳みかけるように繰り返される演劇部の日常から地区大会の場面。スピード感ある集中度がいい。切り替えの早さも役者の腕前。その部員たちの活き活きとした様子。あえなく落選してがっかり泣きじゃくる様子。それを励まし、「皆んなの一世一代の舞台に立ち会えて幸せだった、ありがとう」(筆者うろ覚えです)という主人公のセリフが、繰り返される。これが「演劇なんかやったって・・」の答え。演劇でなくても、スポーツであれなんであれ、田舎でも都会でも、夢中になれる好きなことをするのに、こんなことやって役に立つのか、と問うのは虚しい。実務とは次元が違う。役に立つも立たないもない。魂の栄養なのだ。生きることそのものなのだ。

主人公の一人芝居で始まるこの劇は、芸達者な俳優陣8名で愉快に展開。それぞれが個性豊かでありながら、しっかり統率されていた。精鋭部隊といった感じだ。中でもカメ役の朽木氏、新鮮だった。明逸人氏はギターと歌でも活躍、すごいな。ああゆうのは中高生版ではどうなっているのか興味がわく。年齢的に役柄と同年代だからさらに生々しくて泣けるのではないか。見りゃいいんですけど時間が合わず。これはぜひ札幌演劇シーズンなどで再演して欲しい。
2017年12月23日14:30 コンカリーニョにて観劇

text by やすみん

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