【特別寄稿】審査員、徒然語り 寄稿者:うめ

ホームページ講評を書き終わり「お役御免だー!」と解放感に浸っていた直後、この「語り場」特別寄稿のご依頼を頂きました。
TGR、まだ終わりじゃなかったかぁ…。作品についての感想はホームページ講評の方に書いたので、じゃあ個人的な感想などを、つれづれと語らせて頂きます。
 
まずは3年間審査員をやらせて頂いて、大変だったけど本当に楽しかったなぁ。人脈も知見も広がったし、貴重な経験をさせて頂いたことを関係各所に感謝しています。思い返すと自分にとってメリットしかない経験だったかも。だって札幌の劇団・役者に以前より詳しくなれた上に、色々なジャンルの作品を観る機会に恵まれたことで自分の興味の幅が広がったし。あと何となく敷居が高く感じていた、こぐま座とBLOCHに臆せず出入りできるようになったのも嬉しい事です(笑)。
 
でも特に面白い経験だったのが、他の方の感想を色々と聞けることでした。(当たり前ですが)審査員一人一人に色々な作品の読み方・好みがあります。私は審査員をやる前は基本一人で観て自己完結していたので、自分以外の感想を聞く機会がとっても新鮮でした。会話の中で、自分の中で言語化できずにわだかまっていた気持ちをバシッと言葉にしてくれることが多々あり、それがもう震えるほどに楽しかったです。
なので思い返せばTGR期間中に、一番テンションが上がったのは授賞式前日の審査会でしたね。劇団の皆さんにとってのハイライトは授賞式当日かもしれませんが、審査員にとってはその前日の審査会こそが今まで観てきたものをバーッと吐き出す、一番熱くなる場だったと思います。あの場で「あーでもない、こうでもない」と言い合ったり聞いたりする楽しみがあったから、一か月間黙々と観劇できたのかな(今思えばですが)。
 
 
ちなみに、その審査会の場でも観劇スタイルの差が色々あって面白かったです。私は観るたびに感想をメモして、審査会の時はそのメモ&作品全体の印象で順位付けしていましたが、中には演出・役者・舞台美術等をきっちり点数化して順位を決める審査員もいれば、メモは一切取らずに自分の記憶だけで印象に残った作品を決めるという審査員もいました(そのやり方、格好いいから真似してみたかったけど、特に記憶に残らなかった作品を思い出せないリスクが高すぎて実行できなかった…)。
年齢も職業も観劇スタイルもそれぞれの審査員が集まって決めるTGRの作品が、〈札幌の観客が選ぶ演劇〉として“観る側”も“作る側”も納得のラインナップだといいな、と思いながら毎年選んでいましたが、さてさて、ご期待に添えていたでしょうか?
 
今年の授賞式終了後、大きな解放感・達成感を感じるとともに、来年は11月に風邪をひかないように気を付けなくてもいいし、手帳とにらめっこしながら観劇スケジュールを決めることも無いのかと思うと、少しだけ寂しくもなりました。審査員としての役目は終わりですが、来年は一観客として格安回数券を活用してTGRを適度に楽しむ予定です。
 
 
あと最後に苦言(?)を一つ。
今年のTGR期間中に観劇していて気になったのが、開演時間ピッタリに始まらない劇団が幾つかあったことです。10分くらい待たされて、その理由がどれも「遅れているお客様がいるから」というものでした。でも、それっておかしいですよ…ね?
定時に来ている観客を差し置いて、遅刻してくる観客を待つのは変だよなぁと、何だかモヤモヤしました。遅れてくるお客さんを待ってあげる優しさ、という考え方もあるとは思いますが、とりあえず待たされた方は(少なくとも私は)いい気分じゃなかったです。こういう些細なことで、観客の満足度を下げてしまうのはあまりに勿体ない!遅れてくる人が一番悪いとは思いますが、開演時間ピッタリで始めることを今後劇団関係者の皆様にご配慮頂ければ幸いです。

text by うめ

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