沖縄で平田氏に会う 寄稿者:北川大輔

劇場をやってます、と自分の仕事を紹介することが最近多いのだが、どうにも何をやっているかを説明するのが難しく、先日も警官相手に劇団と劇場が違うものであることを熱弁しながら、なんだかなあという気持ちになった。

とかく、この仕事には教科書がない。大学に入って、舞台の機構のことを教わった。照明はこうやって点けるのだと、もう名前も知らない先輩に夜な夜な教えてもらった。作品を作りたい、と思ってから、演出のことを学びに、20くらいの作品で演出助手をやってきた。だが、「劇場の運営の仕方」は、誰からも教えてもらえない。アルバイトとして潜り込み、芸術監督、という名札をつけ、いつの間にか自分が先頭でこの劇場を切り盛りせねばならぬ立場になっていく中で、自分がこれまで欲しかったものを揃えていくことと、自分がこれまで欲しくなるであろうものを準備することだけに費やした6年間だった。

そんな中で沖縄で平田さんに会った。

自分がこれまでやってきたことを、数十年前から動かしていた先輩に会えて、言葉を選ばなければホッとした。自分がこの数年情熱を傾けてきたことは間違いじゃなかったのかもしれない、と思えた。資本の薄さに歯痒い思いをすることが多々あった中で、彼が札幌でどう耕してきたのかはとても有効な教科書として今後参考にさせてもらいたいと思っている。

講演の最後、私は彼に「情熱を燃やし続ける事ができる理由」を尋ねた。
彼は「初めて観た演目の感動」と答えた。

本当かよ、と思い、まあそうか、と思い直し、そしてそれで良いのだ、と思った。
何か自分の中で滅私奉公を務めているような気分になっていた自分に気づいた。私の中の傲慢さ、卑しさを感じた瞬間だった。
今私が取り組むこの事業の未来が札幌にあると思っている。まだお伺い出来たことがなく恐縮だが、一度確かめたい。そして、今後なにが必要になるのかをまた学びに行けたらと思っている。

寄稿者:北川大輔
花まる学習会王子小劇場 芸術監督

text by ゲスト投稿

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