今後のチャレンジにも期待 劇団plus+『姉妹、一肌脱ぎますッ!』

2017年12月3日に初演を見た。日曜日の15時に上演だった。
2018年1月22日。再演を見た。月曜日の20時に上演だった。大寒の只中、東京では雪が積もったらしい。
らしい、というのは、テレビから得た情報であって、経験ではない。
情報を得て、それを確認するために行動し、自分の中に経験として取り込む。情報と言うのは理由付けで、自分のアンテナに引っかかるもの、お得、限定、モンドセレクト受賞、有名人御用達、インスタ映え。回りくどい。
失礼を承知ではっきり言うと、劇団プラスさん、再演の広告が下手すぎる。対象はリピーターだけなのか。チラシがひどすぎる。TGRの新人賞を獲った作品。宣伝材料になるウリ文句のはず。が、その文字の小ささは、お問い合わせの次に大きく、スタッフさんの名前と同じ大きさ。獲りたかった賞じゃないのか?3年連続エントリーするほど欲しかったんじゃないのか?
「他劇団と日程が重なっていたため動員はなかなか伸びなかったのですが、TGRで新人賞1位をもぎ獲るほどに周囲から評価されました。しかし観られなかった人もいるだろうから、隠れた名作と言われるまま埋もれさせたくないので、ぜひ観に来てください絶対に面白いから、なんせ新人賞を射止めた作品ですからね、自分の目で確かめてください、できればお友達もお誘いくださればありがたいです、お値段もお手ごろ、絶対に損はさせません、まずは観てください!」という再演なのではないのか。せっかく掴んだ新規顧客獲得の口実を、こうも不意にするのはあまりにもひどい。
なぜこんな話をしたか。動員が少ないと感じたからだ。リピーターは来る。問題は新規。日時を考慮しても、8割以上が埋まっていてもおかしくない内容と価格だと個人的に思っている。前売り1,000円は安い。本当に安い。
動員拡大は絶対に必要であるのに、絶好のチャンスを活用していないことが非常に残念だ。

さて、内容はというと、初演と比べて「笑える面白い!」に振ってきたなと思った。
女子3人のトークから物語がはじまるのだが、そこから既におもしろのボリュームを増やしていた。
良く言えばアドリブが当たりの日だったので、物凄く笑える場面が多かった。飛び道具的なゲスト梶原くん(宴夢)がとても機能していたし、ひびきさんは千と千尋の神隠しの一幕を取り入れたり、濱名美玖さんは随所で見せる動きも面白く、コントの延長という感じですこぶる爽快に笑った。
その反面、森田真莉菜さんが出ていないシリアスシーンでは締まった印象が無く、初演に感じた、ある種パッケージングされたドラマとしてのバランス、は無いと思った。森田さんだけがツッコミとして成立していて、他の人だけのシーンではパキッとした着地点が見当たらず、暗転したとしてもダラダラとした笑う感覚の尾ひれがあって、森田さんがでてきてやっと空気が切り替わるという按配になってしまっていた。ゆえに、リピーターには腹から爆笑でも、初見の人にしてみればこの役の人はほんとうに信じていい人なのか、このシーンは笑ってもヒント見逃さないかな、梶原君は最後に知的に変貌するために馬鹿を演じて欺いているのでは?という部分が薄くなってしまった。落としどころやフレーズだけはしっかり決めてあるほうが初見の人に楽しんでもらえると思った。となると、やはりリピーター向けの再演だったのだろうか。
もちろん伏線の言葉遣いの選び方や、鍵となる部分の掛け合いなどはさすがTGR新人賞を獲得したお芝居という完成度。
闇金業者の名前が「借りたら最後ファイナンス」だったり、できる女友達役の野澤さんがスーツ姿なのにキティちゃんの柄が入ったショートソックスだったり、梶原正樹くん(劇団宴夢)がどんな深刻な場面でも変顔をしていたり(ちゃんとした演技で)姉妹の部屋のにおいを嗅ぐ仕草をしていたりと、演劇や芝居という観点からすれば、わちゃわちゃしていたし、芝居の温度バランスもアドリブに左右されるんじゃないかと危惧したが、ひとつ上の視点、エンターテイメントとして捉えると、生でしか味わえない臨場感を前面に押し出した素晴らしいパフォーマンスだと感じた。
それが劇団として本意なのかはわからないけれど、再演を余熱で作る鍋の〆だと捉えているのなら、初演のだし汁を利用して、さらにそれぞれの個性的な食材や調味料、お客さんの笑いやモヤモヤをかき混ぜて調和させる試みをライブキッチンという形で森田真莉菜さんはしたのかもしれず、それは僕にとってこの上なく美味しかった。ごちそうさまでした。
そういう枠をはみ出す実験や、チャレンジはどんどんやっていって欲しい。
好き嫌いは食べてみないとわからない。だからこそ、ベースの鍋の味つけ美味しいよってしっかり告知をして、たくさんのお客さんが食材を持ち寄って食べにきて、どんどん味に深みが増すといいなと心から願っております。

1/22 20時 BLOCH

投稿者:橋本(30代)

text by 招待企画ゲスト

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