楽しい:コンカリーニョ・プロデュース『ちゃっかり八兵衛』

なんか「笑点」にこんな人いたよな〜(いません)という風貌で、演出家の南参氏が観客のウォームアップ。観客も一緒に踊る場面が用意された「参加型」芝居ということで、ワクワク感を盛り上げた。劇場に入る前に時間を潰していた喫茶店で、隣席にいた見知らぬ老夫妻が、「シーズンは色々あるけど、何がいいかわからんかった。これは珍しく時代物だからいいべ。」「んだね、時代物いいね。」と会話していた。マキノノゾミ氏のよくできた脚本に、小林エレキ氏、榮田佳子氏の両名優が主役とあって、老夫妻のチョイスに間違いはない。ただ、彼らは無事モーニング娘を踊れたかな。「おとーさんたら違うよ」とか言いながらきっと楽しんでいただろうと思う。

前回TGRで本作品を観劇した時は、テーブル付き席でワインやおつまみ持ち込みの女子会だった。もちろん楽しめたが、接待役だったので、一応お客の女子たちのグラスやお弁当や顔色をうかがいながらの観劇だったから集中力を欠いていた。今回じっくり観たら、榮田氏の演じる取り立て屋の季里が男に騙されていたと知らされるシーンの演技で、ほろりときた。やはり、エレキ氏と榮田氏の場づくりは秀逸だ。二人が見せる江戸の人情と心意気。粋で痛快。

要体力の何役もこなす、深浦佑太氏の走りっぷりは立派。同じく前田透氏も負けず。そして脇をしっかり固めるのが、長流3平氏。この人の存在は貴重だ。笑わせながら過不足ない演技でベテランの安心感があった。主役と共にこういう厚みが、他の役者の派手な体当たり演技やギャグを盛り支えるのではないか。

大石親子のストーリーが、もう一つのドラマチックなモチーフで、棚田満氏と増田駿亮氏が力演していた。棚田氏が観客を笑わせたい気持ちはよくわかるが、面白おかしい分、若くして殉じて死にゆく息子にせめて女を抱かせてやりたい、という切ない親心の表現が薄れる。ま、笑いと真剣さの度合いの好みの問題でしょう。増田氏は、力が入り過ぎ、ややわめき過ぎ、という感もあったが、まあ主税(チカラ)だけに力が、なんちゃって、若々しい頑張りは誉めたい。

楽しかった〜とラブマシーンを口ずさんで琴似駅。ふと、取り立て屋季里が涙をこらえるシーンが頭によみがえってきて泣きそうになった。何が印象に残るか、わからないものだ。これだから芝居は生き物で、日によって人によって感想が違う。だから面白い。

 

2018年2月16日19:30 コンカリーニョにて観劇

text by やすみん

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