小気味よいお芝居 劇団不退転『トランス』

『トランス』はあまりに有名なお芝居。セットもあまり必要とせず登場人物も3人だけというシンプルさ。ただし内容は重い。

高校の同級生、立原雅人(髙岡諒一)、後藤参三(中村雷太:クラアク芸術堂)、紅谷礼子(佐藤花香)。大人になった立原はあるぼったくりバーで散財しそうになる。そこを助けてくれたのがおかまホステスになった後藤。
一方で、立原は自分の精神状態がおかしいと精神科を訪問する。そこには医師となった紅谷がいた。「離人症かな」と自己診断しながら精神科に通う立原。精神的に破綻一歩手前の立原は紅谷のすすめで入院する。入院生活をかいがいしく手助けするおかまの後藤。やがて立原は自分が南朝の天皇であると妄想したり、しかも実は精神を病んでいるのは医師となった紅谷であるといったり…。

若い俳優さんたちの熱演は観ていて小気味よかった。声も良くそれぞれにパワー全開の演技だった。高速のセリフ回しの場面でも聞き取れないということも少なく、3人とも力を持った役者さんだった。
それだからこそ、不満に思ったことがひとつ。
それは立原の「壊れ加減」が足りなかったように感じたことだ。トランスというだから相当ぶっ飛んでしまってもいい。現実と妄想がスイッチするところがこのお芝居の面白さだと思うので「壊れ方」が中途半端だと後藤や紅谷とのやりとりも色あせてしまう。とくに最終盤の3人とも壊れてしまうようにみえる場面は、立原の「壊れ方」が中途半端だっただけに観ていても何が何だか分からなかった。と書いていて、もしかして観客を混乱させることに演出の意図があったのかと思ったり。げに演劇は面白い。

『トランス』は、たしか2011年に、立原=信山E紘希 、紅谷= 玉置陽香 、後藤=前田透という配役でサンピアザ劇場で観た( 座・れら。
演出:鈴木喜三夫)。信山E紘希の「壊れた立原」が今でも記憶に残っている。しかもおおよそ似つかわしくないおかまの前田透。どちらも衝撃的に面白かった。今回の後藤もおおよそ似つかわしくなかったが、前田のそれにはかなわない。

リーフレットを読むと、劇団不退転第一回公演。その場所として255席あるサンピアザ劇場を選んでくれたことに感謝。しかも団員はあえて髙岡一人だというから恐れ入る。いつか満席となる日が来ることを大いに期待したい。

上演時間:1時間32分
 
 
3月25日12時 サンピアザ劇場

投稿者:熊喰人

text by ゲスト投稿

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