20年の重み yhs『きつい旅だぜ』

yhs「きつい旅だぜ」(東ファミリー)をことにパトスにて。当日券で入場。コメディで懐に入り込み、逃げようがなくなったところで状況を説明するというもの。それだからか、前半と後半で客席の雰囲気も変わったような気がする。まだまだ続くきつい旅を覚悟し、なんとか希望を見出そうとする終わり方。

両親が子どもたちの年齢を考えると若く見えすぎるという誰もが思う(そして演劇上の約束ということで無視する)ことを話の中に取り込み、重要な意味を持たせる。そして20年という時間の長さがわかるようなエピソードも出し、それも主題に絡めてくるあたりは熟練の技。

過去を振り返り否定的な話に終始するサクヤと、過去を乗り越えて前向きに行こうとするマヒル。朝を真ん中に置いて、時間的に正反対の方向に向かった意味の名前の持ち主が、問題に対して名前の通り正反対の反応。ただ、どちらにとっても辛い状況というのは変わらない。

寄り添うようにみせて自分に関わる事になると豹変するとか、ひどい奴と非難するのは簡単だけど、自分がその状況に置かれたら、あんなもんだろうとも思う。同テーマの芝居や映画、新書だともっと酷い目に遭うものもあるので、かなり手加減してあるけどそれでもきつい。

  • 2018/07/04 19:30
  • ことにパトス
  • 約1時間10分

yhs「きつい旅だぜ」(西ファミリー)をことにパトスにて。前日に引き続き当日券での入場。しかも座った場所が最前列の下手側とほぼ同じ場所。完全ダブルキャストで、サクヤの性別も変わっている事もあり、雰囲気がけっこう違う。東家より少しシリアス寄りになっているような印象を受けました。

最初の方で卓袱台のコップが倒れる場面があったけど、曽我さんがこぼれたお酒を拭いて、座布団をひっくり返すまでを、特に慌てた様子もなくやりきっていた。そういう演出なのか、稽古で同じような場面が何回もあったのか。アドリブでやりきったのなら自然ですごい。

話の内容を知ってからの観劇なので、入場時の曲の歌詞まで、劇中の要素と繋げて考えてしまう。確かに止まった時間の物語。

サクヤの女性化は意外と違和感がなかった。おそらく性格や設定を役者さんがうまく消化しているという事。男がエレキさんだけの場面が増えたけど。

ママが序盤は少しはっちゃけた感があったけど、シリアスモードなってからは落ち着いた、だけど少し狂気が入ったような口調。これは東家も同じなので、そういう指示なんだろう。じわじわと追い詰めてくるようで少し怖い。あの口調で詰問されたらすぐに謝ってしまいそう。

両方観ると、頭の中でキャストを色々と入れ替えてみたくなる完全ダブルキャスト制。演劇シーズンでやる場合、毎回違う組み合わせになったりして。今回の家族のまとまりもいいけど、そういったのも観てみたくなるお芝居でした。

  • 2018/07/05 19:30
公演日:

text by 小針幸弘

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。