劇団イナダ組「いつか抗い そして途惑う」をコンカリーニョにて。テレビの単発ドラマのサスペンスもの的な作り。観客を惑わすような部分で登場人物への評価を一変させてみせるあたりは熟練の技というところ。エピローグではきっかけになるエピソードを入れて、なんとも言えない余韻を残してくれた。
藤村さんの役を武田さんが演ったらどんなかななどと想像してしまったりもしたけど、あの社長の雰囲気はやはり藤村さんならではなのだろう。実際にはエリートの側であろう藤村さんが小さな会社の社長役で、本当にその辺にいそうな感じに見えるのも面白い。
同じ場面が、おそらく世間から思われているものと、実際にそうだったものが提示される。悪意があからさまに出てきて、感情がぶつかり合う前者と、内面については前者で語り尽くしたとばかりに波風が立たない中で突然事件が起こる後者では、後者が現実的か。
話の内容やエピローグから、特捜最前線のエピソードみたいだなと感じた本作。事件に関わったふたりの孤独と、ありえたかもしれない未来みたいなものを感じたから、そう感じたのかもしれない。再演されたら、また観たい作品。
- 2018/06/09 17:00
- コンカリーニョ
text by 小針幸弘