≡マサコさんの部屋≡  vol.7   一新!「教文演劇フェスティバル」〈前編〉札幌の演劇シーンの向上を目指して

毎年夏、札幌市教育文化会館(以下、教文)で行われている教文演劇フェスティバル(以下、演フェス)のプログラムの一つ「短編演劇祭」が、今年、様変わりする。開催を8月のお盆時期から9月に移行、出場団体を前年度のチャンピオンを含めて5団体にし、2日間にわたって上演・審査をしていた日程を1日に短縮。さらに、元々決勝が行われていた2日目には、チャンピオンになったことがある4団体が競演する「グランド・チャンピオン・ステージ」を新設した。その狙いを教文事業課の方々に聞いた。

 

●新たな一歩を

2008年に始まった短編演劇祭は昨年、10年目を迎えました。札幌で演劇のイベントとして定着し、道外の劇団が出場することで全国的にも知名度が上がりました。でも、どこか「限界が来ているのではないか?」という思いもありました。その理由は短編演劇祭へのイメージの固定化です。
ここ数年の出場団体を振り返ると、若手の劇団が名を連ねています。感じ方はそれぞれだと思いますが、「若手ばかりが出ている」という印象を持つ人も多いことでしょう。また、司会やゲストなどは変わりますが、短編演劇祭のプログラム自体は前年の内容を踏襲している部分が大きいです。実は来年の12年目に大きなリニューアルを控えています。そこで11年目の今年はこれまでと一区切りし、来年に向けての新しい一歩として位置付けています。その構想の実現のために、昨年の今頃から企画が動いていました。その「一歩」は、チラシからも伝わると思います。

●台本審査を見直し

出場団体は台本審査で決めています。去年までは前年チャンピオン以外の8団体を選出していました。選ばれた時点で同じ土俵にのりますが、審査委員の「好み」を別とすると、最多得票数で一抜けした台本と下位通過の台本の力量には差が出がちです。「選ばれる数が多ければ、1位と最下位で得票数の差が開く」のは当然と思います。
話を戻すと、それならば台本審査を通過する数を減らし、力が拮抗している台本を選んだ方が、短編演劇祭がより面白くなるのでは?と考えました。台本審査は劇団名を伏せています。例えば、これが札幌の劇団であれば、選ぶ審査員も人間なので、知り合いだとか自分が推しているとか、気が付かないうちに思い入れを持って読んでしまう可能性もありますから。
ここ数年は札幌以外や道外勢の参加も増えました。当初、道外勢の参加は「招待枠」でしたが、日本劇作家協会東海支部「東海連合」が2連覇し、札幌勢にその実力を見せつけています(マサコ注:中学生が演じた『海獣日和』は最高でした。本編〈後編〉にもこの話題が出てきます)。

●動員も課題の一つ

夏恒例の演劇イベントとして定着する一方、動員では難しい部分がありました。札幌勢が勝ち残ると、普段からその団体を観続けているファンが集まりますが、札幌以外や道外勢は短編演劇祭が「札幌初公演」ということも少なくありません。また、札幌で活動しても、必ずしも単独公演が成功していたり、注目度が高かったりという団体ばかりではありません。「劇団怪獣無法地帯」や「イレブンナイン」が短編演劇祭で連覇して盛り上がっていた時期と比較すると、正直なところ動員数は減っていました。
そこで考えたのが審査員です。これまでは札幌の劇団主宰者や短編演劇祭にゆかりがある人にお願いしました。もちろん、地元の演劇関係者に審査してもらうのも有意義ですが、新しい一歩となる今回は、参加する団体が「この審査員に評価されるのは嬉しいけど怖い」と感じている方や、観客が「この人の講評を聞いてみたい」と思うような方を選びました。さらに、審査員と参加団体の間にパワーバランスを設けることによって、作品づくりへの力を入れ方や上演への熱量が変わるのではないかとも考えました。
審査員の発表も工夫しました。これまでは全ての情報を一挙に出していましたが、第1弾、第2弾…と一人ずつ発表したんです。だから、最初に斎藤歩さん(北海道演劇財団の常務理事・芸術監督。(マサコ注:『半分、青い。』の最初の方に出ていたあの人です)。が発表された時、演劇ファンの間では「第一弾が歩さんなら、次は誰が出るんだろう?」などと盛り上がったようです(マサコ注:他2人は、「第三舞台」で小劇場ブームを牽引し、今は若手の役者を集めた「虚構の劇団」を率いる鴻上尚史さんと、個人的に舞台『ミザリー』での怪演が強烈に怖かった渡辺えりさん)。
2日目のゲストコメンテーターとしてTEAM NACSの森崎博之さんを発表した時は、演劇ファン以外や道外からの反応もあったほど。演劇を知らない人にとって、劇場はあまり縁のない場所です。だから、審査員や森崎さんをきっかけに実際に劇場に足を運んで、演劇の面白さに触れてもらえたらいいな、と思います。

●過去の優勝作品を今、みせる

2日目の「グランド・チャンピオン・ステージ」ではかつてのチャンピオンが過去の作品を上演します。「星くずロンリネス」以外の3団体の主宰者は台本の審査員でもあり、Ustreamで講評を聞いて、「これだけあーでもないこーでもない言っていた人の劇団は、いったいどんな作品を上演しているのか」と思った人も多いかなと。そんな人の疑問を解消するチャンスにもなるし、今や現役バリバリで集客力もあるベテラン劇団が短編演劇祭に参加していた当時の作品を、今の力量で上演してもらったらどうなるのか。運営側としても期待が高まります。実際、観客アンケートにもベテラン劇団の短編作品を観たい、という声も多かったです。現チャンピオン「星くずロンリネス」の上田龍成くんが、昨年壇上で「ベテラン劇団と競いたい」と言っていましたしね(マサコ注:実は上田くんの思惑はちょっと違う。詳しくは〈後編〉で)。

●札幌の演劇シーンをつなげていきたい

札幌では、中学生・高校生の演劇発表会、札幌演劇シーズン、短編演劇祭、TGR札幌劇場祭と、1年中何かしら演劇公演が行われていて、全国からも演劇が盛んなマチと注目されています。一つ一つの存在感が際立っていても、横のつながりはまだまだかなと思うところがあります。昨年まで、短編演劇祭の開催は夏の演劇シーズンとかぶっていました。9月にずらことで演劇シーズンの「熱」を受け取り、さらに熱量を大きくして、次に橋渡しして…とつなげていけば、札幌の演劇シーンはよりいい方向に向いていくのではないか。それが公共の劇場としての役割の一つではないか…と思っています。

8月31日に取材

●教文演劇フェスティバル2018
・短編演劇祭~9月8日
・グランド・チャンピオン・ステージ~9日
いずれも札幌市教育文化会館小ホール
→前売りは完売。当日券は若干枚数用意。詳細は札幌市教育文化会館のホームページ(http://www.kyobun.org/)、Twitter(@en_fes)で。

text by マサコさん

SNSでもご購読できます。