何だか惜しい BLOCH PRESENTS 2018 TDP second touch 『ATOM』

「マサコ部屋」で作演出の井上悠介に聞いた時の、「今回、やりたいこと」はうまく盛り込まれていたと思う。が、何だか惜しい、と思う作品だった。

高校入学と同時にロボット部に入ることになった戸田が、ロボット同士が戦う全国大会に出場し、かつての友人と再会。決勝戦を友人と戦う-というのが物語の軸になっている。そこに、ロボットの大会に熱を入れている男子らなどの話が追加されたり、主人公の戸田がタイムリープしたりして話が進んでいく。

何が「惜しい」のかというと、なくても成立するのでは?と思う場面が差し込まれ、観ている側が「あれは何だったんだ?」と疑問を抱えながらラストまで走らされる点だ。例えば、生徒会長が夜中に呼び出されて男からお金を渡される場面。「あの2人の関係は何なのか?」と思わせておいて、その答えはなかったと思う。その設定が主人公を車で轢くためだけなら、物語に無関係の人間で良かったと思うし、車に轢かれたことで主人公が「自分もロボットなのでは」と疑う流れでは、「夢の中の話」などで十分伝わったのではないか。『電王』は全体的にぐしゃっとした印象だったが、『ATOM』ではすっきりと整理されていた分、やっぱり惜しい。

これまで2.5次元の舞台をいくつか観ているが、このジャンルのすごいところは、原作を知らなくても何も考えずにラストまでたどり付くことだと思う。「2.5次元」か「2.5次元のノリ」の違いは別として、どんな作品を作りたいかと同時に、「ラストまで観客を連れて行く構成」にもう少し重きを置いてもいいんじゃないかなぁ。

バスケ部員になったり、ロボットになったりした市場ひびき。この人、痩せたらB LEAGUE富山グラウジーズの宇都直輝みたいになるんじゃないか、と思ったのは私だけだろう。

 

9月2日、BLOCHにて観劇。

text by マサコさん

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