9月29、30日、札幌のターミナルプラザことにPATOSで、札幌と長崎県・佐世保の役者とスタッフ、佐世保出身で東京を拠点とする演出家でつくる舞台『マグノリアの花たち』が上演される。直線距離で約1500キロ離れている二つの都市を演劇で結ぶ公演だ。その制作を担っているのが、公益財団法人佐世保地域文化事業財団/アルカスSASEBOの畠本哲郎さん。公演への思いなどを聞いた。
アルカス佐世保の畠本さん
札幌の高野吟子(劇団新劇場。以下、吟子さん)とナガムツ(劇団コヨーテ。以下、ナガムツさん)が、初めて佐世保と“コラボ”したのは、2015年の『隣にいても一人』。この時は、2人が所属していた劇団名から「芝居のべんと箱×アルカス演劇さーくる」という冠が付いていたものの、佐世保の役者・演出家による「佐世保版」と、吟子さんら札幌の役者と故・舛井正博さんの演出による「札幌版」の二つをそれぞれ上演するだけにとどまった。『マグノリア-』では、「芝居のべんと箱」名義から吟子さんとナガムツさんによるユニット「吟ムツの会」に変わり、本当の意味で佐世保との“コラボ”作品となる。
ここで畠本さんと吟子さん、ナガムツさんの関係を補足しておく。畠本さんは佐世保の高校を卒業後、北大に入学。その後、演劇を通じて吟子さんとナガムツさんと出会い、今に至る。ちなみに、吟子さんは「畠本くん」、ナガムツさんは「はぁーたぁーもぉーとぉー」と呼んでいることが多い。つまり、3人はとても仲がよい。
●何かやりたいよね、で約18年
2人とは、1997年に一緒に芝居をやりました。吟子さんたちが作った「夢迷の会」というグループで、ムッちゃん(ナガムツさんのこと)が客演していて、私が舞台監督でかかわりました。結局、別役実の『木に花咲く』の1本だけで終わったんですけど、そこから3人で「何かやりたいよね」と話し続けて約18年、2015年にやっと『隣にいても一人』で実現しました。その時は、先に佐世保公演を終えていた佐世保チームを呼び寄せて、札幌チームと交代で上演したんですが、助成金を出してくれた北海道文化財団から「(札幌から)佐世保には行かないの?」と言われたのが、『マグノリア-』を企画するきっかけです。
芝居のべんと箱×アルカス演劇さーくる『隣にいても一人』札幌版
●札幌の役者たちが佐世保へ
「今度は吟ムツが佐世保に行きましょ」という話から、作品を作って持って行くのではなくて、せっかくなら「佐世保と札幌とで共同制作しませんか」という流れになりました。前に「やるなら『木に花咲く』がいいかなぁ」って吟子さんとムッちゃんが言っていたのを思い出して企画書作ったら、2人に「あんな暗いのヤダ」って却下されて、何だかなぁって(マサコ注:私の記憶が正しければ、2人は琴似の居酒屋で渾身の企画書をあっさり却下しました)。
じゃあ作品はどうする?演出は誰が? ご存命なら舛井さんに頼みたかったですけど、佐世保出身で東京で活躍している宮原清美さん(空間再生事業 劇団GIGA)はどうかなと。吟ムツの2人にとっても新しい出会いになるし、力がある人との組み合わせは面白くなるだろうなって。
ただ、佐世保から連れて行こうと想定していたのは30代の役者。吟子さんは若く見えてそれなりの年だし、ムッちゃんだって50を超えていて、役者の間に年齢差があることに気付きました。「それなら、いろんな年代の女性が出る作品を」と宮原さんが言ってくれて、舞台を原作にした映画が人気となった『マグノリアの花たち』にたどり着きました。
●本番前にゴリゴリ修正中
札幌の大橋千絵さんと小林泉水さんを客演に招き、佐世保から劇団楽園天国の柴田静香、みやの2人が札幌入りして、8月末から本格的な稽古をしています。まだまだ修正するところがあって、直前だけどゴリゴリとやってます。ムッちゃんと吟子さんはとてもにぎやかな役。宮原さんはパワフルな芝居を好む人ですが、そんな宮原さんと「盛り上げ加減」でせめぎ合っている2人が面白いです。『マグノリア-』はとてもにぎやかな作品。ぜひ舞台を観て元気になってほしいですね。あ、『マグノリア-』が美容室で繰り広げられる話なので、公演当日、会場ではハンドマッサージ(有料)もありますよ!
『マグノリアの花たち』の稽古風景
●札幌公演
9月29日14時、19時 30日14時
※いずれも前売りはほぼ完売。27日に、こりっち(https://stage.corich.jp/stage/94146)で当日券情報をアップ予定
●佐世保公演(アルカスSASEBO)
10月19日19時、20日14時
※詳細はアルカスSASEBOのHP(http://www.arkas.or.jp/?a10=a10_34078)
text by マサコさん