テンポ良く、うまくまとまった作品 札幌厚別高校演劇部『学校、2020年』

東京オリンピックも終わった2020年。 ある高校にAI教師が赴任してくる。文部科学省による8,000億円を超える大型プロジェクトの実験のために、一体2,000億円を超えるAI教師が赴任したのがその高校の3年生のクラスだった。
生徒たちすべてのデータが蓄積されたAIに翻弄される生徒たち。何かに付け蓄積したビッグデータと生徒個人のデータから生徒たちの言動をネガティブに決めつけるAI教師。高校生活に意味を見いだせず、少々浮いた存在だった女子生徒、尾崎まりあ(渋谷彩来)は、いちいちAI教師とぶつかる。しかし、ちょっとしたきっかけでAIに狂いが生じ、AI教師はそれまでとは違って生徒たちの言動を肯定し始めた。生徒たちは歓迎するが、これに気づいた「人間の」教師は調査員の派遣を要請し、おかしくなったAI教師のプログラムを元に戻そうとする。今度はAI教師をかばう生徒たち。
時は過ぎ、尾崎まりあが教師となったところで終演する。

話の筋としては極めて分かりやすかった。そして途中で何回か披露された女子生徒たちの合唱も良かった。
この作品は原作の 橋田志乃舞 氏による『2001年 学校』を潤色した作品(潤色:戸塚直人)。これを高校生の渋谷彩来さんが演出した。原作『2001年 学校』はお芝居用に書かれたようなので、初演時は、AI教師は、さしずめコンピュータ搭載のロボット教師がモデルであったと推測できる(その頃からAI教師を取り上げていたとすれば慧眼である)。さもありなんと思わせるストーリー展開だ。

お芝居には全部で11人が登場するが、女子生徒10人、男子生徒1名。男子生徒は調査員役で、いわば脇役であり、ほとんどの時間、女子生徒たちによって物語が進む。尾崎まりあ役の渋谷さんは演技が上手だったし、他の出演者もそれぞれに個性を出していた。
厚別高校は、一時期、部員不足で演劇をするのが難しい時期もあったようだが、これだけの人数を集めることができたのは嬉しい限りだ。しかも全員の台詞まわしも良かったし、動きも無駄がなかった。照明もうまく使われていたように思う。何しろ、1時間弱がとても短く感じられたので、それだけテンポ良く飽きさせなかったといえると思う。
会場で配られたリーフレットを見ると、なんと、原作の橋田氏を含め、イレブンナインの納谷真大氏、札幌座の斎藤歩氏等が協力していたようだ。こんな方々のアドバイスを受けられるのはめったにないだろう。
終わってみれば、次のお芝居にも期待を持たせてくれる、高校生らしいいいお芝居だった。

そういえばリーフレットでは「学校、2018年」と印刷されていたが、これは単純な間違いだったのでしょうね、きっと。

サンピアザ劇場
2018年10月20日16時
上演時間:53分

投稿者:熊喰人

text by 熊喰人(ゲスト投稿)

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