札幌に「個性の強い」「個性のある」役者はいるけれど、「演技力」が伴っているか-という条件を加えると別の話になる。大声を出すとか、ギャグや下ネタを言うとか、変な表情と間で笑いを取るとか、さまざまな手段を使って客席を沸かせようとする気概は評価するが、果たしてそれが面白い作品になるのかどうかという点でも、これまた別の話になる。それはさておき、4人組「さんぴん」の札幌公演は、役者の熱量というか、「札幌初上陸」の意気込みというか、とにかく熱く圧倒された70分だった。
さんぴんの4人は、個々の事情で日にちをずらして北海道に上陸。つてをたどって市井の人々の話を聞き(時には突撃リポートも)、それを再構築して演劇にした。「舞台」にはキッチンスペースも使い、音響も暗転も4人全員でやる。コンパクトで無駄が出ないように考えられた舞台とも言える。
短編がいくつも連なる中、永島敬三(柿喰う客)の落語や北尾亘(baobab)のダンスなども盛り込まれ、飽きる場面が何一つない。演技以外の個々のスキルの高さもさながら、演劇という手法で真っ向から勝負するという気合も感じた。永島、北尾、福原冠(範宙遊泳)、板橋駿谷(ロロ)の4人を別々の舞台で観てきたが、4人が合致するとこうなるのか!という発見もあった(席から4人がとっても近いため、それだけでワクワクしたという加算もあり)。
私が爆笑したのは、(たしか)北大医学部に進学した男の結婚式で、松山千春の「長い夜」を披露するシーン。妻役の板橋が、マイクを離しまくって歌う北尾を見た時の「あら、結構マイク、離すのね」というアドリブだ。板橋はどちらかというとマッチョな体型なのだけど(シャツの前をはだけていて、筋肉が見えまくっているという姿)、そのアドリブ以降、女性(しかも、オバサン限定)にしか見えなくなってしまった。聞けば、このアドリブ、2日目以降はせりふになっていたらしい。ついでに、上手に置かれた音響の卓を、役者に目を向けながらいじる4人の表情が、とてもエロかったことも記しておきたい。
いつも不思議に思うのだが、札幌の観客(役者も含む)は札幌の劇団や役者には騒ぐ一方で、道外から来る「一元さん」にはとても冷たい。台風が直撃するかどうかという際どいタイミングだったとはいえ、東京で、その他の地域で「面白い」と評価されている役者(劇団)をどうして観に行かないのだろう。まあ、その体質が「井の中の蛙」と比喩される理由なんだろうけれど。
さんぴんの4人が、にぎやかしく札幌に戻ってくることを期待したい。
●10月6日、オノベカで観劇
text by マサコさん