「空宙空地(くうちゅうくうち)」という不思議な名前を知ったのは2015年、一人芝居の『INDEPENDENT:SPR15』の原稿を書いた(パソコンで打った)時だ。その公演は結局観に行けず、「空宙空地ってなんだろうな」と思っていた。その後、一人芝居を観た人から「パッとしないのが多かったけれど、空宙空地のおぐりさんのは良かった」という感想を次々と聞いた。さらに『教文短編演劇祭』で競うはずだった上田(龍成)くんからは、「一番怖いのは、名古屋の空宙空地ですよ」とおののく声。俄然、興味は高まるばかり。
そこで、11月3、4日にコンカリーニョで上演する舞台『轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は』(2016年初演の映像)を一足先に観せてもらったが、ギャグを言わずとも巧妙なせりふの掛け合いで笑いを誘い、誰かの話のようで自分の話のようでもある-という奥深い物語だった(これまた、本公演を観られないのが泣けるほどつらい)。札幌初公演を前に、本作についておぐりまさこと関戸哲也にコメントを寄せてもらった。
2016年『ふたり、目玉焼き、その他のささいな日常』
おぐりまさこ(代表・俳優・プロデューサー)
「空宙空地」という個人ユニットとして活動を始めたのは2013年。つまり、今年で設立5年です。関戸(哲也、作演出)と2人体制になった2015年からは、毎月のように各地で上演を重ね、息つくヒマもなく走ってるうち、ありがたいことに全国各地に舞台仲間ができました。
今回公演を行う札幌・コンカリーニョには、一人芝居フェスティバル「INDEPENDENT」で来ました。深夜の弁当工場でシューマイ弁当の上にグリンピースを載せる仕事にこだわりを持っているおばちゃんが主人公の「ライト」、認知症にかかった女とその娘の半生を描いた「如水」。そして「ペアプレイ・パレード」という企画にも参加したのですが、かなり早い段階から「空宙空地としてここで単独公演する!」と周りに豪語しておりました。そして今回、それが現実に! 感無量です。
『轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は』は2016年の作品で、空宙空地の長編代表作です。今年、練り直して大阪、名古屋公演を経て、強度と深度をググンと増して札幌で上演します。
「何気ない日常こそが実は、かけがえのないものだったりする」
とある町に暮らす、とある母娘の、そしてあなたの物語。
もうほんとに、1人でも多くの方にお届けしたいです。「いるいる!」ていうパートのおばちゃんが出てきたり、「こんな風に父親と喧嘩したなぁ」なんて思い出したりしながら、肩の力を抜いて観ていただけける作品です。気軽に笑って、そして浸って、思い出したりしていただければいいなあ。
2018年『ドナリ』
関戸哲也(作・演出)
車窓から流れていく、いくつものマンションの光。そこにはそれぞれの営みがあって、それぞれの喜怒哀楽があって、それぞれの人生がある。そんなことを考えるか考えないかするうちに、光はいつの間にか流れ去っていってしまう。もしかして人は、人生は、流れ去るだけのモノなんだろうか。 そんなことを思いつつ、つくった作品です。
●空宙空地
名古屋を拠点に、全国各地でアグレッシブに活動を重ねる、関戸哲也×おぐりまさこの演劇ユニット。ジェットコースターのような独特のスピード感で、言葉の応酬やリフレインを用い、張り巡らせた伏線を回収しながら展開するヒリヒリしたヒューマンコメディを得意とする。『轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は』の初演は、名古屋市民芸術祭2016にて特別賞(奨励賞)を受賞。
●『轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は』札幌公演
コンカリーニョ
公演日時:11月3日17時、4日14時
※両日とも、本編の上演前にイレブンナイン明逸人と澤田未来による『雨の日はジョンレノンと』を上演
チケット予約はhttps://www.quartet-online.net/ticket/gouon_spr
text by マサコさん