力量が発揮された不条理劇 座・れら『The別役!special』Bプログラム

もともと今年7月にシアターZOOで公演した作品から4作品を選んで再上演となった。
今回のお芝居はプログラムA「招待されなかった客」「トイレはこちら」、プログラムB「星の時間」「眠っちゃいけない子守歌」の4作品で、すべてを観たかったが時間が取れず、プログラムBだけの観劇となった。

「眠っちゃいけない子守歌」(演出:戸塚直人、出演:小沼なつき・信山E紘希)
依頼人から話すことを依頼されて福祉事務所からやってきた女。しかし依頼人はすべてのことがらについて「世界がそうさせる」と理屈を付け女を困らせる。女もそんな依頼人に負けじと自己主張し始めるがどうしても会話がちぐはぐになってしまう。それは「エチオピア人とチェコスロバキア人が会話するレコードのような会話」だからなのか。
すべての記憶を失っているかのように見えた依頼人は、女が見付けた家や木の工作によって自分の過去を呼び戻すが、そのまま息絶えてしまう。

「星の時間」(演出:小沼なつき、出演:フクダトモコ・つくね)
ある森に飼い猫のタマを探しにやってきた失業中の男。その森でレストランを開業している女と偶然出会う。女は夜になると野外レストランを開く。女は、お金がない、アパートに夕食の準備があるといって嫌がる男の財布まで取り上げて客に仕立て上げる。そこで出てきたのは、味のないコンソメスープ(コンソメの出汁が瓶の底に沈殿して上澄みだけ)、ハンブルグ風ステーキ(ドゥミドゥミソースが瓶から出てこない)、デザートとして乾燥したバナナ、そしてコーヒー。
女は森の中を歩き回る足音を聞きその主を「あなた」というが、男はそれが気になって仕方ない。やがて森に風が吹き、風の中に足音を聞く失業男。風が吹き抜けて行った後に女が男に向かって一言。「あなたが食べたのはタマですよ。」

不条理劇なので、どことどこがつながっているのか、時間軸がどうなっているのかを想像するのは楽しい。まずは今そこで何が進んでいるのか、何が起こっているのかが重要で、しかも最後をどう締めくくるかが大事。その点で、今回観た2作品はそれなりに楽しめた。

プログラムの順番とは逆に「眠っちゃいけない子守歌」から上演されたが、小沼なつきさん、信山E紘希さんは出色の出来だった。それぞれに自分の価値観で語り合い、時に相手の言い分を認め、時に否定するが、かみ合ってない様子が出ていて実に良かった。信山さんは若いときから好きな役者さんだが(今でも若いけど)、また一段と台詞回しに磨きがかかっていた。小沼さんもいい役者さんだなあ。一挙手一投足に無駄がなかったし、抑えながらも感情を露わにする演技は最高だった。
でも最後に電話がかかってきて女が「今日はアパートには帰りません」というのだけれど、相手は誰だった?そしてこれは何を意味していたのだろうか?

それに比べて「星の時間」は少し切れがなかったように感じた。フクダトモコさんの得体の知れない性格を持つ女とは裏腹に、つくねさん(パーカッショニストらしい)はあまりに人が良すぎる男の演技で、どうも二人が「すれ違っていない」ように見えた。つまりはフクダトモコさんに押されっぱなしだった。もしかするとそれが演出家の意図だったのかもしれないが、もう少し時間軸や立場の違いを強調できなかっただろうか。
そういった点から見れば、上演順は「星の時間」「眠っちゃいけない子守歌」の方が後味が良かったかもしれない。

いずれにしても、脚本も役者さんも良くどちらも楽しめた。
プログラムAも観たかったなあ。
 
 
「眠っちゃいけない子守歌」58分
「星の時間」55分
 
サンピアザ劇場 2018年11月11日14時(途中10分の休憩あり)

投稿者:熊喰人

text by ゲスト投稿

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