別役実……有名で名前は知っているけれど、どういう作品を作っているのか、正直全く知らなかった。
でも、何故かイメージは
「ブラック」
作品を知りもしないのに、そう思い込んでいたのは、どこかで聞きかじった情報によるものかもしれない。
小劇場風に客席がこしらえられたサンピアザ劇場で、今回、初めて観た別役作品は男と女の短編2編。
セリフの重ね方が面白い。
でも、言い募れば言い募るほど、すれ違いずれていく。違和感。
「眠っちゃいけない子守唄」の舞台は、おそらく普通のリビングなんだろう。
男の独り暮らしにありがちな、雑然とした部屋。
男と女、まともじゃないのはどっちなのか。
相手に向けているはずの言葉が、届いていない。そして、相手の言葉も言葉として受け止めているはずが、意味を結ばない気持ち悪さ。
決して複雑な言葉をつかっているわけではないのに、迷路の行き止まりに追い込まれていくような錯覚を起こす。
言葉に気をとられてしまいがちだが、役者さんたちの表情の変化も複雑だった。
最後にテーブルの上の屋根と二人の肩に降り積もる雪が寂しく、哀しい。
「星のレストラン」は、前のお話の最後を引きずってしまい、いまひとつ、話に入っていけなかった。
それにしても、噛み合っているのかいないのか、微妙な応酬。
でも、少しずつ笑いが重なるにつれて、「ん?これは、ナンセンスコメディなの?」と、思っていたら。
最後にどーんとやられた。
怖すぎる。
「ブラック」といえば、暗い、怖い、陰と、マイナスなイメージにとらえてしまうかもしれない。でも、それとはちょっと違う「ブラック」だったようだ。
まともと思われているものへの反発。何事も真正面から受け止めるのではなく、斜めや変な角度から見てみること。
この世界で「わかる」なんて、そもそも幻想だ。
そのことを思い知らされる。
あなたの正しいは、本当に「正しい」ですか?
別役作品は、複雑怪奇に数多く繰り出される言葉でそう問いかけてくる。
そして、その言葉たちを活かすことに役者さんたちが専心しているように感じた。
でも、素直な感想はやっぱり……
怖いなぁ、ほんとに。
だったりする。
11月10日19:00 於:サンピアザ劇場
投稿者:わたなべひろみ(ひよひよ)
text by 招待企画ゲスト