上から目線のつもりは全くないのだが、本作の感想をひと言で表すと「うまくできている」に尽きる。
あらすじはゲストの方がざっくり書いているので割愛。大学教授に騙されて岐阜まで連れて行かれた大学院生が今はイタコの元にいて、岐阜で起きた真実を明らかにしようとするとか、そこに出版社の後輩男子が絡んでくるとか、絡みまくった伏線は鮮やか、かつ、きれいに回収される。今月上旬に観たヨーロッパ企画の上田誠の脚本は「基礎をしっかり組んで家を建てていく(積み上げていく)」という方法に近いが、井上悠介による本作の脚本は「足場だけを組み上げてから室内を形作る」という印象だ。いくつか時間軸が違う場面を見せられて、後にそれが何の意味を持つのかを気付かせるという展開。「うまくできているなぁ」と素直に思った。
これまで、井上くんが作演出を手がけた演劇作品について「ぐしゃっとした印象」と書いたことがあったが、今回、その理由に気付いた。それは登場人物のほとんどにモノローグの場面があること。モノローグは、時間をすっ飛ばしたり、これまでのいきさつを整理して説明したりと使い勝手が良い。観客を次の場面に誘うツールとして、めっちゃ便利だ。一方で、モノローグの場面の間、その人は観客と向き合うために物語の〝本線〟から逸脱する。物語の人物ではなく、観客と向き合う「役目」が強くなる。私の場合、複数人が物語から逸脱しては戻り…を繰り返された末、「これは誰の目線で描かれているんだろう」と物語から脱線していたのだと思う。
あと、そうそう。私は日本史がほとんどわかっていないので、卑弥呼(タイトルの「ひみこ~る」含む)と岐阜のつながりが理解できないまま観続けていた。ラスト近く、「ここに卑弥呼が…」というくだりで、「何、そういうことなの?」と気付いた(私以外にもいたに違いない)。
廣瀬さんの「菱沼、です」がかわいかった。
あの抽象的な舞台セットはかなり好き。
開演前にFACTの曲も流れてた?
Suchmosの「STAY TUNE」8時間はかなりつらいと思う。
11月25日、BLOCHにて観劇。
●追記●
この作品について、「何をやりたいのかわからない」という感想を聞いた。これまでの作品と井上くんの話を思い返すと、自分の興味や面白いものをネタに脚本を書いていると思うので、今回も井上くんの「好きなもの(都市伝説とかオカルト)」を詰め込んだ、と理解しているんですが。井上くん、どうですか?
text by マサコさん